小城羊羹

小城羊羹：佐賀の伝統が生み出す、奥深い甘味

小城羊羹は、佐賀県小城市で製造・販売されている羊羹であり、地域団体商標にも登録されています。小城羊羹協同組合に加盟する複数の業者によって作られており、小城市だけでなく、市外の業者も存在します。2020年には「砂糖文化を広めた長崎街道～シュガーロード～」の構成文化財として日本遺産に認定されました。

小城羊羹の歴史

背景

小城のある佐賀県は、長崎街道が通る砂糖文化の中心地でした。江戸時代には砂糖の献上が盛んで、小城では砂糖や製菓技術を入手しやすい環境にありました。また、名水百選に選ばれる清水川の清涼な水、小豆の一大産地である佐賀市富士町が近くにあるなど、羊羹の主原料である「砂糖」「水」「小豆」の調達に恵まれていました。城下町として茶道文化が発達していたことも、お茶請けとしての羊羹が受け入れられる素地となりました。

森永惣吉と村岡安吉

小城での羊羹製造は、1872年頃に森永惣吉が大阪虎屋の手代からヒントを得て始めたのが最初とされています。彼は「桜羊羹」という名称で赤い羊羹を製造・販売し、その後、白羊羹や茶羊羹も考案しました。日清戦争では軍隊の酒保で扱われ、品質の劣化が少ないことから需要が増加。1914年には「小城羊羹製造同業組合」が結成されました。

村岡安吉は、機械化を導入して生産力を増大させ、鉄道駅での販売や軍への納入にも力を入れました。また、「小城羊羹」という名称を考案し、ブランド化を図りました。第二次世界大戦中には、海軍御用達として「海の誉」ブランドで羊羹を製造しました。

商標をめぐる裁判

小城羊羹は、商標をめぐる裁判を2度経験しています。1度目は「桜羊羹」の商標登録無効審判で敗訴しましたが、2度目の「小城羊羹」の商標登録無効審判では勝訴しました。これらの裁判は、小城羊羹のブランド価値の高さを物語っています。戦後の1952年には「小城羊羹協同組合」が結成され、1954年には「小城羊羹」が団体商標として登録されました。

特徴

小城羊羹の特徴は、伝統的な「切り羊羹」製法で作られている点です。煉り上げた生地を木箱に移して固め、一本ずつ包丁で切り分ける製法で、乾燥した表面に砂糖の結晶ができ、シャリシャリとした歯ごたえと、しっとりとした口当たりが楽しめます。

逸話

戦前の満州では小城羊羹が人気で、ラストエンペラー溥儀の弟、愛新覚羅溥傑が村岡総本舗に来店したこともあります。また、松本清張も小城羊羹を好んでおり、随筆を寄稿しています。

現状

羊羹の需要は高齢層が多いものの、贈答品としての需要が中心です。市場全体としては低落傾向にありますが、一口サイズの販売は伸びています。村岡総本舗が「本場の本物」に認定されるなど、伝統を守りつつ、新たな取り組みも行われています。「羊羹のおいしさ講座」の開催やパッケージデザインの近代化、変わり種羊羹の開発、そして「日本一! ようかん祭り」の開催など、消費拡大への動きが続けられています。

小城羊羹は、その歴史と伝統を守りながら、現代のニーズに合わせた変化を遂げようとしています。佐賀の豊かな風土と職人の技術が融合した、奥深い味わいをぜひお試しください。

文化財

村岡総本舗羊羹資料館: 国の登録有形文化財。砂糖貯蔵庫として建てられた和洋折衷の建築物。
齊藤商店店舗兼主屋: 国の登録有形文化財。羊羹の原料となる砂糖の卸売店舗。特徴的な屋根を持つ洋風建築。

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