山本五郎左衛門

山本五郎左衛門の物語

山本五郎左衛門（さんもと ごろうざえもん）は、日本の江戸時代中期に創作された妖怪のキャラクターで、特に有名なのは彼が登場する『稲生物怪録』という妖怪物語です。この物語は、日本の平安時代に存在した実在の妖怪やそのエピソードが描かれており、妖怪の姿や性格を通じて、様々な人間模様や社会の裏側を映し出しています。

妖怪の姿と性格

五郎左衛門は、妖怪の中でも特に影響力のある存在であり、彼を中心に妖怪たちが集まる様子が描かれています。平田神社所蔵の古い妖怪画では、三つの目を持つ烏天狗の姿で表現されていますが、自身は天狗や狐狸とは異なると述べています。彼の性格は非常に独特で、強い意志を持っており、また他人の勇気を高く評価する姿勢も見受けられます。

彼は1749年、備後国三次（現在の広島県三次市）で実在の藩士・稲生武太夫の幼名である稲生平太郎に対して、さまざまな怪異で脅し続けます。平太郎は驚くことなく耐えたため、五郎左衛門はその勇気を認めざるを得なくなります。やがて彼は自らの悪事を退くことを決意し、平太郎に支援を約束しつつ、木槌を残して去るのです。この木槌は、広島市の國前寺に寺宝として伝えられており、地域の信仰の一部となっています。

物語のバリエーション

『稲生物怪録』は複数の写本が現存しており、そこには登場人物の名前やエピソードにおいて微妙な差異が見受けられます。たとえば、1806年に平田篤胤が翻刻した際には、五郎左衛門は自身が初めて日本に渡ったのは源平合戦の時であると語っているシーンがあります。また、1886年に発行された『怪談稲生武勇伝』では、彼が平太郎に与えたものが木槌ではなく「蒼生心経術」と呼ばれる巻物であったとされています。この巻物は、病人を救う呪文が書かれたものでしたが、平太郎の兄は生まれつき短命であり、救えない運命にあったことが伝えられています。

類話の存在

五郎左衛門の物語に類似する話も存在します。広島県の比熊山に住むとされる「三本五郎左衛門」という妖怪の話もあり、この妖怪もまた特定の人物の勇気を称賛し、霊的な存在としての役割を果たします。このように、五郎左衛門の物語は広島の地域文化や信仰と深く結びついています。

代わりに出てきた神秘的な存在との相互作用や、物語の中での登場人物の勇気が描かれていることは、読者の心を惹きつけ、彼の存在が永く語り継がれる理由となっています。

参考文献

• - 杉本好伸 編『稲生物怪録絵巻集成』国書刊行会、2004年。
• - 平田篤胤 著「八　稻生物怪録」、室松岩雄 編『平田篤胤全集 〔第3〕』法文館書店、1911年。
• - 月之舎秋里 編『稲生武勇伝』覚張栄三郎、1886年。

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