岳亭春信

岳亭春信（がくてい はるのぶ、生没年不詳）は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師であり、戯作者としても名を残しています。

来歴

春信は、魚屋北渓と葛飾北斎という二人の著名な絵師に師事しました。姓は八島、本姓は菅原、俗称は丸屋斧吉といい、画号は春信、岳亭、岳鼎と名乗った後、定岡、鳳卿などを用いています。また、狂歌や戯作においては五岳、岳山、一老、岳亭山人、丘山、南山、陽亭、陽斎、黄園、神歌堂、神哥堂、堀川多楼、八しま翁、八島五岳、堀川多楼春信、陽斎南山、八島定岡、八島春信、岳亭岳山、岳亭丘山、岳亭春信、東武岳亭、岳亭五岳、八島岳亭、黄園八島翁五岳、黄園五岳、堀川春信、八島老人、梁左など、数多くの号を使い分けました。

春信は江戸で、幕臣平田氏の妾腹の子として生まれたと伝えられています。生母は本妻の嫉妬を避けるため、幼い春信を連れて八島氏に嫁ぎ、春信は八島氏の養子となりました。青山緑ヶ丘、南伝馬町、人形町、日本橋坂本町などに居住していたとされています。幼少の頃から絵を好み、初めは堤秋栄に絵を学びましたが、後に魚屋北渓の門下に入り、さらに葛飾北斎から直接指導を受けたとされています。また、狂歌を窓村竹、石川雅望に学んでいます。

若くして絵の才能を発揮しましたが、養父母が長らく病を患っていたため、家計は苦しく、思うように絵の道に進むことができませんでした。両親の死後、ようやく絵を仕事にすることができたといわれています。文化から明治年間にかけて作品を制作し、豪華な摺りの狂歌摺物や狂歌絵本を手がける一方、合巻や読本を多く執筆しました。文政から天保にかけて数回にわたり京都や大坂に滞在しています。没年は明治2年（1869年）以降と推測されています。

作品

春信は、浮世絵師としてだけでなく、戯作者としても多くの作品を残しました。以下に代表的な作品を挙げます。

『四季のあそひ』：通用亭ほか撰
『狂歌歳時記』四冊：狂歌絵本。文政13年（1830年）刊行
『半月夜話』：読本。文政14年刊行
『絵本西遊記』四編40冊：読本。『西遊記』の邦訳で、春信は三編と四編を「岳亭丘山」の名で担当。天保6年（1835年）完結
『俊傑神稲水滸伝』：読本。春信の自画作
「浪華名所天保山勝景一覧」：錦絵。天保5年刊行

所蔵

「女三の宮図」：絹本着色。熊本県立美術館所蔵
「花魁立姿図」：絹本着色。大英博物館所蔵

参考文献

藤懸静也『増訂浮世絵』雄山閣、1946年
日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）大修館書店、1982年
『北斎一門肉筆画傑作選　―北斎DNAのゆくえ―』板橋区立美術館、2008年

関連項目

浮世絵
葛飾北斎
魚屋北渓

もう一度検索