放線菌

放線菌の概要

放線菌（ほうせんきん、英: Actinomyces）は、細長い形態で菌糸を形成するグラム陽性の細菌群を指します。その名前は彼らが放射状に成長する特徴から来ていますが、最近の分子系統学の進展により、類似の形態を持つ桿菌や球菌もこの分類に含まれるようになっています。このため、放線菌をその形態的特徴で定義するのは難しくなっています。

放線菌はアクチノマイセス門（Actinomycetota）に分類され、さらに多くの属がアクチノバクテリア綱として認識されています。菌糸の形態を示さない便宜的に放線菌に分類されない属も存在しますが、最も典型的な放線菌であるストレプトマイセス属（Streptomyces）は、気菌糸を形成し、胞子を持ち、肉眼的に糸状菌のように見えます。

生息環境と機能

放線菌は主に土壌に生息し、一般的には好気性であるものが多いですが、一部は嫌気性環境でも生存しています。彼らは堆肥の発酵に関与し、土壌の栄養素循環を助け、病原菌の抑制にも寄与します。特に、放線菌はキチンを分解する能力に優れており、土壌にキチンを添加することでその活動が促進され、他の病原菌の増殖が抑制されることが知られています。

発見の歴史

放線菌は1875年にフェルディナント・コーンによって人の涙管から分離され、病原微生物として認識されました。この菌の名前は、ギリシャ語のアクティース（光線）とバクテリアの合成に由来しています。

主な属

放線菌には多くの属が存在し、それぞれ異なる特性を持っています。

• - コリネバクテリウム属 (Corynebacterium): 一部は工業的に重要なグルタミン酸生産菌を含み、病原性を有さないものもあります。

• - マイコバクテリウム属 (Mycobacterium): 結核やらい病の原因菌を含む重要な属です。

• - ロドコッカス属 (Rhodococcus): 環境中で広く分布しており、多様な機能を持つ細菌群です。

• - プロピオニバクテリウム属 (Propionibacterium): 食品製造などに利用され、アクネ菌としても知られています。

• - ストレプトマイセス属 (Streptomyces): 抗[[生物質]]の生産が特に多く、さまざまな医薬品の源として利用されています。

• - マイクロコッカス属 (Micrococcus): 一般的に病原性は少なく、身近な環境でよく見られます。

• - フランキア属 (Frankia): 窒素固定を行い、植物と共生します。

• - ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium): 人間の腸内で善玉菌として機能し、整腸剤の成分としても知られています。

医学的関連

放線菌は口腔内や腸管の常在菌として存在しており、場合によっては放線菌症と呼ばれる病気を引き起こすことがあります。主に顔面や頸部に現れることが多く、他の感染症と併発することもあります。特にアクチノマイセス属のいくつかの種が病原性を持っていて、これが免疫力の低下や外的要因によって活性化されることがあります。治療には抗[[生物質]]が使用され、特にペニシリン系が多く用いられます。

現状

放線菌がもたらす医療の進展や土壌環境の改善における役割は依然として注目されており、彼らの機能や特性の研究はますます重要性を増しています。近年の系統学的な再分類においても、放線菌の位置づけは常に進化しており、今後の研究によってさらに多くの知見が得られることでしょう。

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