日勝峠

日勝峠：道央と道東を繋ぐ険しい峠道

日勝峠は、北海道の沙流郡日高町と上川郡清水町の境界に位置する、標高1022mの峠です。十勝川水系と沙流川水系を分ける日高山脈の分水嶺にあたり、両水系共に太平洋へと注いでいます。道央と道東を結ぶ重要な交通路として、古くから利用されてきました。しかし、その険しさは本州の標高3000m級の山岳地帯に匹敵するほどの過酷な環境であり、年間を通して通行には細心の注意が必要です。

厳しい自然環境と交通事故

日勝峠は、1年中霧の影響を受けやすく、特に夏期は清水町側を中心に濃霧が発生し、視界を著しく遮ります。冬期には吹雪に見舞われ、視界不良による交通事故が多発しています。こうした危険性を踏まえ、視線誘導施設の設置や防雪・路面凍結対策などが進められてきました。また、登坂車線やブレーキ故障車のための緊急待避所の設置も、安全確保に貢献しています。

日高町大颱橋から清水町石山までの33.3km区間は、特殊通行規制区間として指定されており、通行制限や車両通行の条件が定められています。これらの対策にも関わらず、依然として交通事故のリスクは高く、通行する際には最新の注意が必要です。

道路整備の歴史と台風被害

日勝峠の道路整備は、1800年代後半から始まり、幾多の測量や踏査を経て、1965年に「日勝道路」として全線が開通しました。その後も道路改良が続けられ、1991年には新日勝トンネルが開通し、交通の利便性が向上しました。2011年には道東自動車道が道央圏まで延伸し、峠越えの負担軽減に繋がりました。

しかし、2016年の台風10号により、日勝峠は甚大な被害を受けました。土砂流入、路面崩壊、落橋などが発生し、日高町千栄から清水町清水までの43.8km区間が通行止めとなりました。複数の場所で道路が大規模に崩落し、複数の橋梁も落橋するなど、壊滅的な被害を受けました。関係者による懸命な復旧作業の結果、2017年10月28日に通行止めは解除されましたが、この災害は日勝峠の自然環境の厳しさを改めて浮き彫りにしました。

周辺環境と注意点

かつて清水町側の頂上にはコンビニエンスストアがありましたが、現在は閉店しています。また、札幌側から日勝峠へ向かう場合、最寄りのガソリンスタンドは日高町にあるため、清水町までは給油できない点に注意が必要です。周辺には、日勝峠園地展望台などの観光施設もあります。

日勝峠のデータ

最急勾配：6.2％
最小曲線半径：62m
延長：57.8km（昭和40年開通時）
開発道路区間：53.151km
* 総工費：19億6,293万4千円（昭和40年開通時）

日勝峠は、歴史と自然が織りなす、魅力と危険性を併せ持つ場所です。通行する際には、最新の道路情報を入手し、安全運転を心がけることが重要です。

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