服部誠一

服部誠一：明治時代の文筆家、ジャーナリスト、そして教育者

服部誠一（はっとりせいいち、1841年4月6日-1908年8月15日）は、明治時代の著名な文筆家であり、ジャーナリスト、そして教育者でした。陸奥国（現在の福島県）出身で、号は撫松（ぶしょう）。二本松藩の儒官の家に生まれ、藩校や湯島聖堂で学び、その後自身も藩校の教授を務めました。廃藩置県後、著述業に転じ、その才能を開花させました。

時代の寵児『東京新繁昌記』とジャーナリストとしての活躍

1869年、服部は藩の公用人として上京しましたが、廃藩置県により職を失います。しかし、この転機が彼の人生を大きく変えました。1874年、文明開化の東京の風俗を描いた『東京新繁昌記』を出版。寺門静軒の『江戸繁盛記』を明治時代にアップデートしたようなこの作品は、福沢諭吉の著作に匹敵するほどのベストセラーとなり、1万数千部を売り上げました。この成功により、湯島に邸宅を構え、吸霞楼と名付けました。

『東京新繁昌記』の成功は、服部を時代の寵児へと押し上げました。多くの著作が、彼の名を使って出版されるほどになったのです。この人気を背景に、1876年には九春社を設立し、週刊雑誌『東京新誌』を発刊しました。『東京新繁昌記』風の漢文や、仮名交じりの戯文、人情小説などを掲載し、著名人の噂話や政治への痛烈な風刺批評なども掲載し、大きな人気を博しました。その後、姉妹誌『春野草誌』も発行しましたが、こちらは1年ほどで廃刊となりました。

その後も、政論雑誌『江湖新報』を刊行するなど、精力的に活動を続けました。1882年には立憲改進党に参加し、政治新聞『内外政党事情』の発行にも携わりました。しかし、政府批判を繰り返したことから、彼の雑誌は何度も発禁処分を受けました。『東京新誌』も、井上馨令嬢に関する暴露記事がきっかけで、恒久的な発行禁止処分を受けました。しかし、すぐに『吾妻新誌』を発行開始するなど、その活動は衰えることはありませんでした。

教育者としての晩年

晩年は、文部省図書課詰などを経て、1896年に宮城県尋常中学校（現在の宮城県仙台第一高等学校）の教員となり、作文や漢文を教えました。彼の教え子には、後に著名な社会学者となる吉野作造も含まれていました。1908年、夏期休暇で上京中に脳溢血（または心臓麻痺）のため、東京で亡くなりました。

服部誠一の影響

『東京新繁昌記』から『東京新誌』にかけての服部の文体は、六朝風や六経の引用、浄瑠璃の文句、都々逸、漢詩など、多彩な要素を大胆に融合したものでした。「権妻」や、官吏を鯰や泥鰌と呼ぶ表現なども、服部の造語でした。『東京新繁昌記』の成功は『江戸繁盛記』を再評価させ、同種の作品が数多く出版されましたが、いずれも『東京新繁昌記』ほどの成功は収めませんでした。

『東京新誌』では、桑野鋭、荒井繚太郎、三木愛花など多くの文筆家が執筆に関わっていました。

服部誠一は、ジャーナリスト、文筆家、教育者として、明治時代の社会に多大な影響を与えた人物でした。彼の作品や活動は、現代においても、明治時代の社会や文化を知る上で貴重な資料となっています。彼の功績は、今後も高く評価されるべきでしょう。

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