本棚

本棚

本棚とは、主に書籍を収納するために設計された棚のことです。本箱、書架、書棚、本立などとも呼ばれますが、明確な区別はあまりありません。現代の本棚は、通常、本を下から支える構造で、横からの支えは少ないものが一般的です。

構造

一般的な本棚は「モノコック構造」で、側板、棚板、裏板の3つの要素で構成されます。

側板：本棚の両端を構成し、本の重さを支える支柱となります。
棚板：本を載せる水平な板で、本棚の「一段」を構成します。最上段は天板と呼ばれ区別されることもあります。棚板は固定式と可動式があります。
裏板：本棚の裏側に貼られた薄い板で、横からの衝撃を吸収します。

本棚の軽量化のため、側板や棚板には薄い化粧板を貼ったフラッシュ構造が用いられることがあります。最下段の上げ底部分はハカマと呼ばれ、埃対策として採用されることもあります。

大きさ

高さは一般家庭向けで2m30cm以下が一般的です。横幅は、棚板60cm程度が理想的とされ、図書館学者のメルヴィル・デューイは、約100cmを理想としています。奥行きは30〜35cmが一般的です。

素材

素材は合板、ベニヤ、スチール、ステンレスなど多岐にわたります。デンマークのイェリング中央図書館では、リノリウム、MDF、エポキシ樹脂、テキスタイル、スポンジなどが使用されています。

現代の本棚は、単なる収納家具ではなく、モダンアートやエンジニアリングの実験であり、ステータスシンボルとしての役割も担うようになっています。

歴史

初期

ローマ時代は、パピルス製の巻物を丸めて保管し、カプサと呼ばれる箱にまとめて収納していました。図書館や書店では、壁に棚を設置し、巻物を積み重ねて保管していました。紀元数世紀ごろに手写本（コデックス）が登場すると、アルマリウム（戸棚）が広く使用されました。この時代の本は貴重品として扱われ、アルマリウムには鍵や留め金がついていました。持ち運びが必要な場合は、チェスト（収納箱）が利用されました。イングランドのヘレフォード大聖堂には、1360年ごろに作られたブックチェストが現存しており、厳重な管理が行われていたことがわかります。

鎖でつながれた本

図書館や修道院では、本の盗難を防ぐため、本を書見台にチェーンでつなぐ習慣が広まりました。これは、17世紀末ごろまで続けられました。蔵書が増えるにつれて、書見台の上下に棚が取り付けられるようになり、現代の本棚の原型が生まれました。

しかし、本を棚へ移動させる際に鎖が絡まるという問題が発生し、それを解決するために、ストール・システムと呼ばれる書見台と書棚を組み合わせたものが登場しました。当初は平積みでしたが、本の増加に伴い、縦置きへと変化しました。両端に垂直の仕切り、上下に水平棚を持ったストール・システムの登場によって、現代の本棚に近い形へと進化しました。この頃の本は鎖でつながれていたため、背を奥にして収納していました。

印刷本の普及に伴い、本の価値が相対的に下がり、鎖でつなぎ止める必要がなくなり、本棚は次第に現代の形へと変化していきました。

書斎の収納

個人の家や書斎では、使用頻度の低い本はチェストへ、高いものは机上や壁の簡易棚に置かれました。17世紀以前は、蔵書が数十冊を超えることは稀であり、平置きで十分でした。ドイツ、オランダ、スペイン、イギリスなどでは、前小口を外に向けて並べることが一般的でした。フランスやイタリアでは、本の背を外に向けて収納し、著者名や題名などを書き加えて識別するようになりました。17世紀のイギリスの作家サミュエル・ピープスは、本のサイズによって収納位置を整理していました。

日本における歴史

日本では、室町時代末期には個人宅に本棚が存在していたと考えられていますが、飾りとして使われることが多く、実際には箱や櫃が主流でした。現代の本棚が普及したのは大正時代後半で、関東大震災を契機に広がったとされています。昭和初期には、円本が登場し、本棚に並べることを前提とした書籍が登場し、本棚の目的と用途に変化が見られるようになりました。

本の収納

本棚に本を置くときは、縦向きに背表紙を手前に向けるのが一般的です。これにより、書名や書籍番号がすぐわかり、目的の本を見つけやすくなります。背表紙が見えない状態や平置きにすると、個々の書名がわからず、探すのに手間がかかります。ただし、古い和書などは構造上立たず、平置きが適しています。和書の場合は、棚に分類項目を書き込んで検索しやすくします。

洋書では、初期の本は留め金や装飾が多いため、平置きされていました。16世紀まで、本は平置きが普通で、床と擦れないように表紙に飾り鋲が付けられたり、小口側に装飾やタイトルが付けられました。

その他の種類

一般家庭ではあまり利用されない本棚の種類としては、以下のようなものがあります。

移動書架：ローラーやレールで本棚を移動させ、限られたスペースに大量の本を収納します。現代では、安全装置が取り付けられています。
全自動書架：運搬ロボットが専用の書庫から図書の入ったコンテナを窓口まで運びます。大規模な図書館などで使用されます。
回転式書架：どの方向からでも本を取ることができるようにした書架です。ヴィクトリア朝後期に開発され、参考図書の収納に用いられました。

これらの本棚は、図書館や書斎など、大量の本を効率的に収納する必要がある場所で利用されています。

注釈

本文書では注釈は省略します。

脚注

本文書では脚注は省略します。

参考文献

Irwin, Raymond (1958). The Origins of the English Library. London: George Allen & Unwin
Clark, John Willis (1901). The Care of Books: An Essay on the Development of Libraries and Their Fittings, from the Earliest Times to the End of the Eighteenth Century. Cambridge: University Press
Gladstone, W. E. (1890). On Books and the Housing of Them, Nineteenth Century XXVII
Ramelli, Agostino (1976). The Various and Ingenious Machines of Agostino Ramelli (1588). Translated and edited by Martha Teach Gnudi and Eugene S.Ferguson. Baltimore: Johns Hopkins University Press
Shailor, Barbara A (1991). The Medieval Book: Illustrated from the Beinecke Rare Book and Manuscript Library. Toronto: University of Tronto Press. ISBN 978-0802068538
Streeter, Burnett Hillman (1931). The Chained Library: A Survey of Four Centuries in the Evolution of the English Library. London: Macnillan
アレックス・ジョンソン[著]、和田侑子[訳]『本棚の本』グラフィック社、2012年。ISBN 978-4-7661-2288-6。
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日本マス・コミュニケーション学会『マス・コミュニケーション研究-第73号』学文社、2008年。ISBN 978-4-7620-1862-6。
* ヘンリー・ペトロスキー[著]、池田栄一[訳]『本棚の歴史』白水社、2004年。ISBN 4-560-02849-4。

外部リンク

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