椎橋重

日本の男性声優、椎橋重（しいばし しげる）は、1948年6月14日に千葉県に生を受け、1998年9月3日に50歳の生涯を閉じました。彼は主に声優事務所の81プロデュースに所属し、アニメーション作品や吹き替え、特撮、さらには舞台と、非常に多岐にわたるジャンルでその表現力を発揮しました。

椎橋氏のキャリアは、専修大学経済学部を卒業後、演劇の世界へと足を踏み入れたことから始まります。伝説的な声優・俳優である野沢那智氏が主宰した劇団薔薇座で演技者としての基礎を学び、その後、劇団フェドー劇場の創立メンバーの一人として名を連ねるなど、舞台俳優としても精力的な活動を展開しました。特に、舞台『ジャンヌ・ド・ピエンヌ』は彼の初舞台として記録されています。

声優としての主な活動は、1980年代後半から本格化しました。テレビアニメでは、1989年に放送されたミニ四駆を題材とした人気作『ダッシュ!四駆郎』で富士山役を演じたのを皮切りに、歴史ドラマ、スポーツ、少年漫画原作など、様々なジャンルの作品で個性的な脇役を数多く担当しました。例えば、『お〜い!竜馬』では山田広衛、『炎の闘球児 ドッジ弾平』では鬼塚虎造、『ジャングルの王者ターちゃん♡』ではバロウズ、『ゴールFH』では三枝監督、『サッカーフィーバー』ではカーターをはじめとする複数のキャラクター、『アリス探偵局』（第2期）では野牛豚兵衛、『BURN-UP EXCESS』では知事といった役を演じています。中でも、1996年から1998年にかけて放送され、ミニ四駆ブームを牽引した『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』シリーズ（無印、WGP、MAX）では、主人公たちの師であり、物語の鍵を握る人物の一人である岡田鉄心役を全シリーズにわたって務め、多くの視聴者に強い印象を残しました。

OVA（オリジナルビデオアニメーション）作品への参加も少なくありませんでした。1988年の『日本のおばけ話「きもだめしのばん」』での権役や、近未来アクション『エンゼルコップ』（1989年）、高校野球を描いた『緑山高校 甲子園編』（1990年）における緑山高校教頭先生役、経済サスペンス『マネーウォーズ 狙われたウォーターフロント計画』（1991年）、航空隊の日常を描く『青空少女隊』（1994年）での居酒屋の主人役、そして壮大なSF叙事詩『銀河英雄伝説』（1996年）といった、バラエティに富んだ作品群にその声を残しています。

劇場版アニメーションでも活躍を見せました。テレビシリーズで多くのファンに親しまれた岡田鉄心役を、1997年に公開された『爆走兄弟レッツ&ゴー!!WGP 暴走ミニ四駆大追跡!』でも再び演じ、大スクリーンでもその存在感をいかんなく発揮しました。

さらに、吹き替え分野においても確かな足跡を残しています。洋画では、往年の人気コメディシリーズ『ピンク・パンサー5 クルーゾーは二度死ぬ』でロバート・ロッジアが演じたブルーノの吹き替えを担当したり、ジャッキー・チェン主演のアクション大作『ポリス・ストーリー/香港国際警察|ポリス・ストーリー_香港国際警察』（フジテレビ版）ではフォン・ハックオン演じるダニーの声を担当するなど、数多くの作品に参加しました。海外アニメーションでは、『バットマン』や、人気キャラクターが登場する『ミュータント・タートルズ』でフィルチやトラーグ将軍といったキャラクターに声を吹き込んでいます。また、特撮テレビドラマの世界にもその声を提供しており、1995年に放送された『重甲ビーファイター』では、敵である傭兵戦士ザイキングの声を担当し、作品世界に深みと迫力を加えました。

俳優としてのキャリアも継続しており、舞台『アップル・トゥリー』や『旦那様は狩が好き』といった作品に出演し、声優としての活動で培った豊かな表現力を舞台上でもいかしていました。

個人の側面としては、スポーツ全般とモダンダンスを趣味・特技としていたことが知られています。

椎橋重氏は、1998年9月3日、惜しまれつつも50歳という若さで急逝しました。声優として、俳優として、短いながらも非常に濃密な活動期間の中で、彼が数多くの作品に残した功績は、今もなお多くの人々の記憶の中に息づいています。

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