武蔵野操車場

武蔵野操車場の盛衰：巨大貨物ターミナルの栄光と終焉

武蔵野操車場は、かつて埼玉県三郷市と吉川市にまたがる広大な敷地に存在した、日本国有[[鉄道]]（国鉄）の貨物列車用操車場でした。1974年、武蔵野線の開業から1年半後に、全長5.2km、最大幅約350m、敷地面積約105万平方メートルという日本最大級の規模を誇り、最新鋭の自動化システムを導入した操車場として誕生しました。総工費は280億円にのぼります。

最先端の自動化システム

武蔵野操車場では、当時最新鋭のYACS（Yard Automatic Control System）が導入され、貨車の仕分け・組成がコンピュータで制御されていました。入場する列車の機関車や貨車番号をカメラで読み取り、データ化。入力された貨車番号や行き先データに基づき、仕分け作業が自動で行われました。これにより、大幅な省力化と輸送時間短縮を実現。貨車の組み替えも、無線操縦の機関車によってハンプと呼ばれる坂を押し上げ、貨車を分離して突放し、自動的にポイントを切り替えて目的別に貨車を組み替える仕組みでした。速度検出装置やカーリターダーも導入され、貨車連結時の速度を一定以下に抑え、安全性を高める工夫も施されていました。1日あたりの貨車取扱量は4,400両という巨大な処理能力を有していました。

操車場を支えた施設

これらのコンピュータ制御は、武蔵野線下り線付近にあったコントロールセンターから行われました。操車場内には、武蔵野機関区も設置されており、DE11形ディーゼル機関車が11両配置されていました。

短命に終わった操車場

しかし、武蔵野操車場の全盛期は長く続きませんでした。国鉄の経営悪化によりヤード集結型貨物輸送が廃止されることになり、開業からわずか10年後の1984年に機能を停止。1986年には正式に廃止されました。当時、巨額の費用を投じて建設された最新鋭の設備は、その役割を終え、わずかな期間で歴史の中に埋もれることになりました。

操車場跡地の変遷

操車場の機能停止後、1985年には新三郷駅が開業しましたが、操車場内に線路が残っていたため、上下線ホームが約360mも離れた状態でした。その後、線路が撤去され、1999年には上り線が下り線側に移設され、新三郷駅の上りホームも下りホームの隣に移動しました。かつて360mあった跨線橋は切断され、駅構内のみを跨ぐ橋となりました。また、吉川駅東側や三郷駅西側には、広い複線間隔に操車場時代の名残が見られます。平坦な地形にもかかわらず、常磐自動車道が武蔵野線を三郷トンネルでアンダーパスしているのは、操車場が存在した当時の名残です。

跡地の再開発

廃止後、操車場の跡地は日本国有[[鉄道]]清算事業団に引き継がれましたが、長らく開発が停滞していました。その後、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が発足した後の2006年頃から、ショッピングセンター建設などの開発が進められるようになりました。三郷市域では、三井不動産が跡地を落札し、ららぽーと新三郷やコストコ、イケア新三郷店などが建設されました。また、大型物流倉庫や分譲住宅も建設され、周辺地域は大きく変貌しました。2008年には、この地域が「Shin-Misato LaLa City（新三郷ららシティ）」として住居表示が施行されました。

吉川市域では、新駅の設置を中心とした開発計画が立案され、2012年に吉川美南駅が開業。駅周辺にはイオンタウン吉川美南が開業し、住宅整備が進められました。東口では、2017年から10年計画で再開発事業が進められています。

まとめ

武蔵野操車場は、国鉄の貨物輸送近代化の象徴として、一時的に輝きを放ちましたが、時代の流れとともに短命に終わりました。しかし、その広大な跡地は再開発され、現在ではショッピングセンターや住宅地、新駅などが整備され、地域住民の生活を支える重要な拠点となっています。武蔵野操車場の盛衰は、日本の鉄道史における一つの大きな転換期を示す出来事として、記憶されるべきでしょう。

隣接駅

武蔵野線
吉川駅 - 武蔵野操車場 - 三郷駅

関連項目

日本の[[貨車操車場]]
大宮操車場

外部リンク

1984年撮影の武蔵野操車場付近の航空写真
新三郷ららシティとは？

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