沖縄刑務所暴動

沖縄刑務所暴動事件

1954年11月、アメリカ占領下の沖縄、那覇市に位置する沖縄刑務所で、大規模な暴動事件が発生しました。この事件は、単なる囚人による反乱という枠を超え、当時の沖縄社会が抱えていた複雑な問題を浮き彫りにするものでした。

事件の背景

沖縄刑務所は、戦前には約200人を収容していた施設でしたが、事件当時には851人もの受刑者が収容されており、明らかに過剰収容の状態でした。この背景には、刑法犯の増加に加え、アメリカ占領統治下で新たに制定された集成刑法によって処罰される人々が増加したという事情がありました。

また、1954年は受刑者の脱獄が相次ぎ、点呼を拒否するなどの反抗的な行動が頻発し、刑務所内の秩序は極度に乱れていました。このような状況下で、「暴動が起こるのではないか」という情報が飛び交っていました。さらに、事件直前には人民党事件が発生し、沖縄人民党の瀬長亀次郎が沖縄刑務所に収監されたことも、事件に影響を与えました。受刑者たちは、瀬長を「精神的支柱」とし、勇気づけられたとされています。

事件の概要

1954年11月7日、第1雑居舎第8房の受刑者がドアを破壊して脱出し、他の部屋の受刑者を次々と解放しました。中には刑務所外に脱走する者もいました。この事態を受け、刑務所側は直ちに琉球警察に応援を要請しました。琉球政府は、刑務所の管理を臨時的に法務局から警察に移管することを決定しました。

受刑者たちは、瀬長亀次郎を代表として担ぎ出し、瀬長は琉球政府との交渉を通じて事態を収拾しようとしました。受刑者たちは、人権の尊重と懲戒行為を逸脱した暴力を振るう刑務官の罷免を要求し、「これは暴動ではなく、基本的人権を獲得するための闘いである」と主張しました。しかし、一方で、薬用アルコールを盗んで「酒」として受刑者全員に振る舞ったり、家畜のブタを屠殺して豚料理を作るなど、刑務所内は無秩序状態に陥っていました。

このような事態を受け、琉球警察は鉄帽とカービン銃で武装した警官隊を刑務所内に導入し、11月11日に暴動は鎮圧されました。しかし、この事件の責任を問われ、刑務所長や暴力的な刑務官も懲戒免職となりました。また、受刑者側の要求にも一定の配慮がなされることになりました。その後、翌年の7月まで警察による刑務所の警備が続けられました。

事件と沖縄人民党

暴動が発生した11月7日は、ロシア十一月革命勃発記念日でもあったため、当初は瀬長亀次郎ら沖縄人民党が計画的に起こした犯行であると見なされました。しかし、実際にはこの事件は自然発生的に起きたものでした。

事件の影響と意義

沖縄刑務所暴動事件は、当時の沖縄における社会問題を浮き彫りにした出来事でした。過剰収容や刑務所内の不当な扱いに対する受刑者たちの不満が、事件の背景にはありました。また、この事件は、アメリカ統治下における沖縄社会の矛盾や、人権意識の高まりを示すものでもありました。この事件を契機に、沖縄における刑務所運営や人権問題に対する関心が高まり、その後の沖縄社会に大きな影響を与えることになりました。

参考文献

比嘉清哲『沖縄警察50年の流れ 犯罪実話物語』1997年
沖縄県警察史編さん委員会編『沖縄県警察史 第3巻（昭和後編）』2002年

関連項目

沖縄刑務所
暴動

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