浜松歌国

浜松歌国：多才な江戸時代後期の作家・浮世絵師

浜松歌国（はままつ うたくに、1776年-1827年）は、江戸時代後期に活躍した作家であり、浮世絵師としても知られています。屋号は布屋、本名は平岡氏助または清兵衛と推測され、八重垣、颯々亭、南水といった複数の号も用いていました。

多彩な活動：脚本から錦絵、読本まで

歌国は当初、歌舞伎や狂言の脚本家としてキャリアをスタートさせました。金沢竜玉らとの協業も多く、数々の作品を世に送り出しています。役者評判記で二代目大谷友右衛門を批評したことが、友右衛門の怒りを買ったという逸話も残されています。その後、読本へと活動の場を移し、数多くの作品を発表しました。

さらに、歌国は浮世絵師としての才能も持ち合わせていました。文化11年（1814年）から文化13年（1816年）頃にかけては、錦絵作品も残しており、役者絵を中心に手がけていたようです。『復讐二島英雄記』や『宿無団七時雨傘』といった歌舞伎作品に関連した錦絵が知られています。

生涯：大坂での活躍と晩年

歌国は1776年、大坂島之内布袋町の木綿問屋である布屋清兵衛家に生まれました。蘭英斎芦国の門人であった彼は、若い頃から戯作や歌舞伎に親しみ、狂言作者奈河晴助との関わりを通して芝居の世界へと足を踏み入れました。寛政12年（1800年）から文政2年（1819年）までは大坂芝居番付に「浜松氏助」の名で、文政3年（1820年）からは「浜松歌国」の名で名を連ねています。

文政9年（1826年）には大病を患い、翌年2月19日に亡くなりました。墓所は油町天鷲寺です。法号の花島歌国信士の「花島」は、浪花島之内の意ではないかと推測されています。

作品：多様なジャンルにわたる創作活動

歌国の作品は、その多才さを反映して、実に多様なジャンルにわたります。主な作品としては、以下のものがあげられます。

錦絵：

「笹原老翁・片岡仁左衛門 宮本無三四・中村歌右衛門」 (文化11年2月)
「時雨傘三枚つゞき 中村歌右衛門」(文化11年4月)

脚本（歌舞伎・狂言）：

歌国は多くの作品を、奈河晴助、金沢竜玉、金沢芝助、松本幸作らと共同で執筆しました。これらの作品は、当時の歌舞伎や狂言の世界において重要な役割を果たしたと考えられます。

「恵宝大功記」 (寛政12年)
「お花半七／妹背通転」 (文化10年)
「奉納名代誉」 (文政4年)
多くの作品が文政4年から文政6年にかけて発表されています。

劇書：

「加賀屋道中記／芝翫栗毛」 (文化11年)
「称讃雅詞／芝翫帖」 (文化11年)
「芝翫贔負／咄の蔓」 (文化12年)

読本：

「矢口続話新田神霊／忠孝貞婦伝」 (文化10年)
「キノニ全伝／駿河舞」 (文化11年)
「仮粧水千貫槽筧」 (文化12年)
「日本廻国勧懲記」 (文化12年)
「大和国筒井清水」 (文化14年)
「今昔二枚絵草紙」 (文政2年)
「会稽三浦誉」 (文政9年)

滑稽本：

「芝翫栗毛」 (文化11年)

地誌・随筆：

「摂陽奇観」 (天保4年)
「摂陽落穂集」 (文化5年)
「摂陽見聞／筆拍子」
「今古参考／南水漫遊」
「御治世見聞録／摂陽年鑑」 (天保4年)
「神社仏閣／願懸重宝記」 (文化13年)
「神仏霊験記図会」 (文政7年)

まとめ

浜松歌国は、歌舞伎脚本から錦絵、読本、滑稽本、そして地誌・随筆まで、幅広いジャンルで創作活動を行い、江戸時代後期の文化に多大な貢献を果たした人物と言えるでしょう。彼の作品は、当時の社会情勢や人々の生活を反映しており、貴重な歴史資料として現在も高く評価されています。

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