海霧

海霧（うみぎり、かいむ）とは

海霧とは、海上で発生する霧のことで、英語では「sea fog」と呼ばれます。主に、暖かく湿った空気が冷たい海面と接触することで発生する移流霧や蒸気霧といった種類の霧です。

海霧の発生メカニズム

海霧は、特定の気象条件下で発生しやすくなります。

中緯度地域での発生:
北半球では、中緯度高圧帯から吹き出す温暖で湿った南風が、大陸東岸を南西方向に流れる寒流によって冷やされることで海霧が発生します。これは、日本列島北東部や北米大陸西部などでよく見られる現象です。例えば、日本では、北太平洋高気圧からの季節風が千島海流に冷やされて海霧が発生します。また、北米大陸西部では、北大西洋高気圧からの季節風がラブラドル海流によって冷やされ、海霧が生じます。南半球には大陸東側に寒流がないため、同様の事例はあまり見られません。

大陸西海岸での発生:
偏西風や亜熱帯高気圧から吹き出した風が、大陸西海岸沿岸の寒流上を通過する際に冷却されることでも海霧が発生します。ベンゲラ海流によるナミブ[[砂漠]]の海霧は、この典型的な例です。また、サンフランシスコでは、夏季に北太平洋高気圧からの北西風がカリフォルニア海流上を通過し、海霧が発生します。

その他の発生要因:
北海に面したイギリスでは、「ハール（haar）」と呼ばれる海霧がしばしば発生します。また、陸地から発生する微粒子が霧の発生を促進する要因となることもあります。

日本における海霧

日本では、特に北海道や千島列島を含む北部北太平洋で、夏になると海霧が発生しやすくなります。これは、北太平洋高気圧から吹き出す比較的暖かい空気が、親潮の影響で冷やされることによって起こります。釧根地方では、内陸部に山地があるため、海霧が滞留しやすく、日照時間が少ない冷涼な気候となっています。地元では、このような海霧を「じり」と呼び、霧と霧雨の中間のような状態として表現されることがあります。

オホーツク海沿岸でも海霧が発生しますが、そのメカニズムはまだ詳しく解明されていません。オホーツク海高気圧が関係していると考えられていますが、今後の研究が待たれます。

文学における海霧

海霧は、文学作品にも登場することがあります。

俳句:
俳句の世界では、海霧は「じり」と読み、夏の季語として用いられます。

* 小説:
釧路市出身の作家、原田康子氏は『海霧』（2002年）で吉川英治文学賞を受賞しました。また、窪田精氏は北海道の開拓民の生活を描いた『海霧のある原野』（1978年）で多喜二・百合子賞を受賞しました。

海霧は、自然現象であると同時に、文学的なモチーフとしても重要な役割を果たしています。その独特な雰囲気は、多くの人々の心に印象を与え、様々な芸術作品に影響を与えています。

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