稲士別駅

稲士別駅（いなしべつえき）

稲士別駅は、かつて北海道中川郡幕別町に位置し、根室本線に存在した駅でした。駅番号はK33。半数以上の普通列車が通過するという、ひっそりとした駅でした。

歴史

1907年、根室本線が釧路まで開通した際、帯広駅と幕別駅間に中間駅を設置する計画が持ち上がりました。当初は札内よりも稲士別の方が中間地点に近かったものの、結果として札内に駅が設置されました。

稲士別駅が設置されたのは、それから半世紀以上経った1959年のこと。地元住民の強い要望により、仮乗降場として開業しました。当時の時刻表には記載されないほどの簡素な駅でしたが、1987年の国鉄分割民営化に伴い、正式な駅に昇格し、時刻表にも掲載されるようになりました。

しかし、依然として停車する列車は少なく、廃止時には下り方面（池田方面）が昼から夕方にかけて5本、上り方面（帯広方面）が朝2本と夕方1本の計3本のみでした。

廃止までの経緯

2016年10月、JR北海道から幕別町に対し、駅の廃止意向が伝えられました。これは、JR北海道が発表した「持続可能な交通体系のあり方について」という発表を受け、当駅の存続が危ぶまれていたことが背景にあります。

幕別町は地域住民への説明会やJR北海道への存続要請を行いましたが、「駅の利用者がいないので仕方ない」「廃止もやむを得ない」という意見が大勢を占めました。その結果、幕別町はJR北海道からの廃止通知を受け入れざるを得ない状況となりました。

そして、2017年3月4日、稲士別駅は利用者の減少とダイヤ改正に伴い、惜しまれつつも廃止されました。

駅名の由来

駅名は所在地名に由来しており、地名は「稲志別」と表記されます。この地名は、アイヌ語の「イナウウㇱペッ（inaw-us-pet）」（イナウ・多い・川）に由来すると言われています。

廃止時の駅構造

稲士別駅は、単式ホーム1面1線を有する地上駅でした。ホームは築堤上にあり、木製のスロープが設置されていました。ホームは線路の南側に位置し、鉄骨の櫓の上に木の板が張られた構造でした。廃止時まで、列車接近表示器とブザーが設置されていました。

帯広駅が管理する無人駅で、駅舎は存在しませんでした。かつてはホームの南側に待合室と仮設トイレがありましたが、老朽化のため2014年に撤去されました。待合室内には売店があり、女性店員が駄菓子と共に乗車券を販売していました。また、撤去されるまで、待合室内には駅ノートが置かれていました。

利用状況

1992年度の1日乗降客数は2人。2011年から2015年の乗降人員調査では、平均1名以下という状況でした。

駅周辺

駅周辺は田畑が広がるのどかな風景が広がっています。十勝川を挟んで隣接する音更町の十勝川温泉の最寄り駅でしたが、駅からの交通手段はありませんでした。

かつては国鉄の保線区の拠点があり、7〜8人の職員が配置されていましたが、官舎は民間に売却され、現在ではアパートとして使用されています。

駅の近隣には、幕別町葬斎場、幕別自動車学校、札内東工業団地があります。

隣の駅

北海道旅客鉄道（JR北海道）

■根室本線（廃止時点）

札内駅 (K32) - 稲士別駅 (K33) - 幕別駅 (K34)

稲士別駅は、短い歴史の中で、地域住民の生活を支え、鉄道ファンに愛された駅でした。廃止後も、その存在は人々の記憶に残り続けるでしょう。

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