窪之内英策

窪之内 英策

高知県高知市出身の日本の漫画家、アーティスト（1966年11月11日生まれ）。かつてカリモク家具株式会社に勤務していたという異色の経歴を持つ。

経歴と漫画家活動

高知県立高知工業高等学校を卒業後、会社員として勤務。その後漫画家を目指し、1986年に小学館の『週刊少年サンデー』に掲載された『OKAPPIKI EIJI』でプロデビューを果たす。デビュー前や初期には、漫画家の島本和彦氏のもとでアシスタントとして経験を積んだ時期がある。

デビュー後は、活動の場を主に青年漫画誌に移し、『ビッグコミックスピリッツ』などで精力的に作品を発表。特に、1988年から連載された『ツルモク独身寮』は大きな人気を博し、作者の代表作となった。この作品に登場する家具会社や独身寮は、自身がかつて勤務していたカリモク家具や、知人の勤め先の独身寮の建屋を参考に描かれたとされている。同作は1991年に映画化され、その後も『ワタナベ』（ドラマ化、監督：黒沢清）、『ショコラ』（ドラマ化）、『チェリー』など、人間味あふれるキャラクターとリアルな日常を描いた作品で多くの読者を引きつけた。

スランプ、休業、そして新たな展開

しかし、『ツルモク独身寮』の後半頃から、窪之内氏は漫画制作において深いスランプに苦しむようになる。絵の技術的な課題や、漫画という表現形式に自身の作風を収めることへのストレス、葛藤がその原因だったという。そして、2010年に連載していた『ピカもん』の途中で体調を崩し、髪が一気に白髪になったことを機に、漫画家としての活動を一時休止することを発表した。

漫画の執筆からは離れたものの、個人的な「楽描き」は継続しており、それらのイラストを自身のTwitterアカウントで公開し始めた。このSNSでの活動が、休業からの新たな展開へと繋がる大きなきっかけとなる。2014年頃からTwitterを通じてイラストの仕事依頼が増え始め、イラストレーター、CMクリエイター、キャラクターデザイナーなど、漫画の枠を超えた幅広い分野での活動を展開するようになる。その温かみのある繊細なタッチは、多くの広告やメディアで注目を集め、現在では漫画家としてだけでなく、多様な表現を手がけるアーティストとして認知されている。

画法と作品

イラスト制作においては、鉛筆で下絵を描き、コピックで着彩するなど、アナログな手法にこだわりを見せる。この独自のアナログ画法から生まれる、柔らかく、どこかノスタルジックな雰囲気を持つ絵柄は、多くのファンを魅了している。

主な漫画作品

ツルモク独身寮（1988年 - 1991年、『ビッグコミックスピリッツ』、全11巻、1991年映画化）
ワタナベ（1992年、『ビッグコミックスピリッツ』、全3巻、1993年ドラマ化）
ショコラ（1999年 - 2003年、『ビッグコミックスピリッツ』、不定期連載、全7巻、2003年ドラマ化）
チェリー（2006年 - 2007年、『ビッグコミックスピリッツ』、全4巻）
ピカもん（2008年 - 2010年、『イブニング』、全3巻）

主なイラスト・広告・キャラクターデザイン

CDジャケットイラスト（NOKKO、WHY@DOLL、RAM WIRE、Goodbye Hollday、スコット&リバース、コバソロなど多数）
鳥人間コンテスト選手権大会 メインビジュアル、イメージアニメ（2015年、2016年）
プレミアムモルツ広告イラスト（サントリー、2015年）
VO5 HIGH EDGEシリーズ オリジナルイラスト（サンスター、2015年）
日清食品カップヌードルCM「HUNGRY DAYS」シリーズ キャラクターデザイン（2017年 - 2020年）
駅すぱあと「サヨとコウの出発」イラスト（2016年）
NHK「アニ×パラ〜あなたのヒーローは誰ですか〜 episode2 パラ陸上競技」キャラクターデザイン（2017年）
アニメ「その時、カノジョは。」キャラクターデザイン原案（2018年）
アニメ「キャロル&チューズデイ」キャラクター原案（2019年）
YOASOBI「大正浪漫」MVキャラクターデザイン、原作小説書影イラスト（2021年）
映画『ハケンアニメ!』劇中アニメ「サウンドバック 奏の石」キャラクター原案（2022年）
日清のどん兵衛「どんぎつねシーズン2 秋祭 篇」キャラクターデザイン（2022年）
アニメ「アストロノオト」原案（2024年）

その他、多数の書籍装画、広告、コラボレーションを手掛けている。

作品集

* ラクガキノート（2017年、玄光社）

島本和彦氏を師匠と仰ぎ、過去には秋重学氏や渡辺道明氏がアシスタントを務めたことがある。

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