紀伊田原駅

紀伊田原駅：歴史と自然が織りなす、紀伊半島の小さな駅

紀伊田原駅は、和歌山県東牟婁郡串本町田原に位置する、西日本旅客鉄道（JR西日本）紀勢本線（きのくに線）の駅です。熊野灘に面した、山と海に囲まれた静かな集落の中に佇む、歴史と情緒を漂わせる駅舎が特徴です。

開業から現在まで：路線の変遷と駅の歩み

紀伊田原駅が開業したのは1936年（昭和11年）12月。国鉄紀勢中線の延伸に伴い、下里駅から串本駅間が開通した際に誕生しました。その後、1940年（昭和15年）には紀勢西線の駅となり、1959年（昭和34年）に現在の紀勢本線が全通すると、紀伊田原駅も国鉄紀勢本線の駅となりました。国鉄分割民営化を経て、現在に至っています。

長い歴史の中で、紀伊田原駅は幾多の変更を経験しています。1962年（昭和37年）に貨物取扱、1978年（昭和53年）には荷物扱いが廃止されました。1985年（昭和60年）には無人駅となり、駅業務の形態も変化を遂げています。しかし、開業当時の駅舎は窓が塞がれたものの、現在も使用されており、歴史を感じさせる貴重な存在となっています。2021年（令和3年）3月にはICOCAの利用が可能となり、利便性の向上も図られています。2024年（令和6年）3月には、スペースポート紀伊での民間ロケット打ち上げに伴い、見学客輸送のための臨時列車が運行されるなど、現代の技術革新とも関わっています。

駅構造と周辺環境：静かな佇まいと豊かな自然

紀伊田原駅は、単式ホーム1面1線と島式ホーム1面2線の、合計2面3線のホームを持つ地上駅です。ホーム間は跨線橋で連絡しており、駅舎は単式ホーム側に隣接しています。無人駅であるため、自動券売機は設置されていませんが、駅舎内には駅ノートが設置され、利用者の交流の場となっています。トイレは改札外に設置されています。

駅周辺は、熊野灘に迫る山々の間にある、田原川河口の小さな平地に開けた集落です。古くからの漁港集落で、駅は集落の西端に位置し、周辺には郵便局、小学校などの施設があります。また、冬季の早朝には「田原の海霧」と呼ばれる現象が見られることもあります。放射冷却によって発生した霧が、田原川を下り、海上で濃くなることで、海面が白く見える独特の光景です。駅周辺には、狭い路地に古びた民家が密集しており、昔ながらの風情を残しています。

読み方と駅名標：歴史が刻まれた名残

駅名の読みは「きいたはら」とされていますが、地名は「たわら」と読むのが正しいとされています。国道42号のキロポストには、「Tawara」と表記されているのも興味深い点です。かつては駅舎の入り口に軒があり、「驛原田伊紀」という旧式表示があった名残も、現在でも見ることができます。

隣の駅

紀伊浦神駅
古座駅

まとめ：歴史と自然、そして未来

紀伊田原駅は、歴史と自然が調和した、静かで落ち着いた雰囲気の駅です。開業以来、時代の変化の中で様々な役割を担ってきた駅舎は、地域の人々の生活に寄り添い続けています。今後、民間ロケット打ち上げによる臨時列車運行など、新たな役割も担っていくことになるでしょう。小さな駅ですが、その存在感は大きく、紀伊半島の魅力を象徴する場所の一つと言えるでしょう。

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