細胞骨格

細胞骨格とは

細胞骨格（cytoskeleton）は、細胞質内に存在する繊維状の構造体であり、細胞の形態を維持し、細胞内外の運動に必要な物理的な力を発生させる役割を担っています。細胞内での膜系の変形や移動、細胞小器官の配置、細胞分裂、筋収縮、繊毛運動など、細胞自身の変形に関わる重要な構造です。

細胞骨格の種類と機能

真核生物の細胞骨格は、主に以下の3種類に分類されます。

1. アクチンフィラメント

直径5〜9nmのマイクロフィラメントであり、2本のアクチン鎖が撚り合わさって構成されています。細胞膜の直下に集中しており、細胞の形状維持、細胞質突起の形成、細胞間や細胞-基質間の接着に関与します。また、細胞質分裂や細胞質流動にも重要な役割を果たします。

2. 中間径フィラメント

直径8〜12nmのフィラメントで、アクチンフィラメントよりも丈夫です。細胞の形態を維持し、細胞内部の3次元構造を構成し、オルガネラを固定します。核ラミナやサルコメアの要素としても機能し、細胞間や細胞-基質間の接合にも関与します。ビメンチン、ケラチン、ニューロフィラメント、ラミンなどが含まれます。

3. 微小管

直径約25nmの中空の管状構造で、αおよびβチューブリンが結合したプロトフィラメント13本から構成されています。中心体によって組織化され、細胞内輸送、繊毛や鞭毛の形成、植物細胞壁の構成に関与します。ダイニンやキネシンといったモータータンパク質と協調して、細胞内輸送を行います。

原核生物の細胞骨格

かつては真核生物に特有の構造と考えられていましたが、近年、原核生物にも細胞骨格が存在することが明らかになりました。原核生物の細胞骨格タンパク質は、真核生物の細胞骨格タンパク質と相同性があり、細胞の形態維持や細胞分裂に関与しています。

1. FtsZ

チューブリンと類似しており、細胞分裂時に分裂部位に集積し、細胞壁の形成を誘導します。

2. MreB

アクチンと類似しており、細胞の形態維持に関与します。細胞膜直下でらせん状構造を形成し、細胞壁合成酵素を誘導します。

3. クレセンチン

中間径フィラメントと類似しており、らせん状やビブリオ様の細菌の形態維持に関与します。

細胞骨格研究の歴史

細胞骨格という概念は、1931年にフランスの発生生物学者ポール・ウィントレベルトによって提唱されました。当初は真核生物に特有の構造と考えられていましたが、近年の研究により原核生物にも存在することが明らかになり、細胞骨格研究は新たな展開を見せています。

まとめ

細胞骨格は、細胞の形態維持、運動、細胞内輸送、細胞分裂など、生命活動の根幹を支える重要な構造です。真核生物と原核生物の両方に存在し、それぞれ異なるタンパク質で構成されながらも、類似した機能を発揮しています。細胞骨格の研究は、生命現象の理解を深める上で不可欠なものとなっています。

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