経塚

経塚（きょうづか）について

経塚は、仏教における経典を土の中に埋めることで供養を行う塚を指し、埋経とも表現されます。この行為は、仏教信者が信仰心から行う善行として位置付けられています。日本の中における経塚の歴史を辿ると、様々な背景や信仰が見えてきます。

経塚の起源と歴史

経塚の根源的な考えは、中国や朝鮮半島に由来しているとも言われています。特に、日本においては平安時代に浄土思想が広まり、個人の祈願を成就させる目的で写経が行われるようになりました。この活動は、奈良時代における官営事業から移り変わったものと言えます。そして、そのような背景の中で、経塚が重要な信仰の形態として広まっていきました。

経塚の建立は、特に永承7年（1052年）の末法思想の影響が強いとされています。末法思想は、仏教の末法の時代が訪れると言われる時期に、人々が信仰を深めるために行動するきっかけとなりました。実際に埋納される経典としては、主に法華経が用いられますが、その他にも『般若心経』や『阿弥陀経』など、さまざまな経典が選ばれることがあります。

埋納される経典の種類と方法

埋納される経典は、大抵が写経された紙に書かれていますが、粘土板や銅版、さらには岩石や貝殻に転写されることもあります。これらの経典は、金属製の経筒に収納され、そこには銘文が刻まれることが多いです。経筒は一般的に筒型ですが、箱型や宝塔の形をしているものも存在し、上部には蓋が取り付けられます。また、経筒自体は陶器や竹製の外容器に入れられることもあります。

埋納の際には、和鏡や銭貨、刀剣、玉などの副納品が共に埋まることもあり、なおかつ湿気防止のために木炭が用いられることがあります。埋納場所は、霊地や聖地（例：山頂や神社境内）などが選ばれ、そこで土中に石室が作られ、経典が安置されます。時には洞窟や岩壁の隙間でも造営されることがあります。

経塚の発展と信仰の変遷

経塚の成立後、特に葛城二十八宿と名付けられた経塚が、役小角による法華経の埋納と関わってくることは重要なポイントです。これは日本での経塚の最古の事例として広く知られています。その後、藤原道長が造営した金峰山経塚など、初期の経塚も数多く現れました。

12世紀以降、一時的に経塚は衰退しますが、中世になると廻国聖がその活動を通じて再び広め、庶民の間でも浸透していきました。この時期には、現世利益や追善供養といった新しい意味が加わることも見逃せません。今年時代には、室町時代において、地域の集団改宗の際に経典が埋められたといった事例が報告されています。

近世の変化

近世になると、経筒を使用した経塚の築造は次第に減少し、小型の礫石に経文の一文字を書写する一字一石経や、複数の文字を記載した多字一石経を埋納する「礫石経塚」が流行しました。近世の経塚は、農業生産の増加や貨幣経済の進展を背景に成立しており、寺院が主導しながら多くの信者が参加する形で築かれました。

このように経塚は、日本における仏教信仰の変遷と密接に関わりながら、さまざまな形で発展してきたことがわかります。

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