経行

経行（きんひん、きょうぎょう）についての詳細

経行は、仏教における伝統的な実践方法の一つであり、特に坐禅の合間に行われる歩行瞑想を指します。具体的には、さまざまな状況下での身心の調整法として用いられ、長時間の座禅を行う際に体に生じる緊張やしびれを和らげる重要な役割を果たします。元々は「そぞろ歩き」という意味を持ち、その実践は『テーラガーター』をはじめとする古典的文献にも記されており、中国や日本においても広く行われてきました。

経行の目的と実践

経行の主な目的の一つは、長時間の坐禅によって生じる身体的不快感を緩和することです。坐ることによって筋肉や血流が凝り固まり、悪化するとしびれや痛みを引き起こすことがありますが、経行を通じて体を動かすことでこれらを軽減できます。更に、経行は健康促進にも寄与しており、義浄によると病気の予防や消化の助けにもなるとされています。これにより、経行はただの体操ではなく、精神的な修行の一環として捉えられています。

特に江戸時代の僧侶、面山は経行法の存在を清規の中には見い出せないとしつつも、黄檗宗の実践においては明確な指導法が存在したことを強調しました。『黄檗山内清規』では、特定の儀式の後に経行を行うことが示され、集団での行動が重視された時期もありました。面山はこのような一斉の経行や坐禅の休憩時間を批判し、より個々人の自由を求めました。

経行の実践方法

実際の経行は、住持の指導のもとで行われ、鐘の音を合図に一斉に僧堂の左右に設けられた経行場にて行うことが一般的です。経行の際は、一定の動作やリズムを保ちながら進むことが強調され、また、経行が行われていない場合には僧堂の路地などでも実践されることがありました。このような環境においては、僧侶たちは心身の調和を求め続けています。

坐る瞑想としての経行

経行には歩行瞑想としての側面だけでなく、午後に行う坐る瞑想の「飲食経行」という用法も存在します。これは一定の時間、坐って瞑想を行う形式ですが、文献においてもこの形態が存在することが示されています。

高麗王朝における経行の変遷

高麗王朝において、経行は公的な行事としての側面を持ち始め、特に朝廷が主催するイベントへと発展しました。具体的には、1046年から毎年春に王都で開催される仏教行進行事において、僧侶と俗人が協力して行う形が一般化していきました。これにより、経行はより大きな社会的意味を持ち、その重要性が再確認されることとなります。

参考文献と関連情報

本解説では、経行に関する文献についても触れています。道元の『寶慶記』や面山の著作『経行軌』、『経行軌聞解』などが挙げられ、現代の解釈にも影響を与えています。また、ティク・ナット・ハンによる『ウォーキング・メディテーション - 歩く瞑想の本』も有名です。関連項目としては、マインドフルネスや行脚なども挙げられるでしょう。これらの文献は、日本の仏教の理解を深める手助けとなり、多くの人々に影響を与えてきました。

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