線維筋痛症

線維筋痛症について

線維筋痛症（せんいきんつうしょう、英: fibromyalgia）は、全身に広がる激しい痛みを特徴とする慢性疾患です。疼痛は筋肉や関節だけでなく、体全体に影響を及ぼし、日常生活に支障をきたすことがあります。この病は新たに認識された疾病ではなく、過去には「非関節性リウマチ」や「心因性リウマチ」と呼ばれたこともあります。近年、米国リウマチ学会によりその概念が明確化され、1990年以降、線維筋痛症という名称が広まってきました。

症状と影響

主な症状は、全身の慢性的な疼痛であり、圧痛点と呼ばれる特定の部位での痛みが重要な診断基準となります。症状は非常に多様で、疲労感、睡眠障害、気分の変動、体温の変化、消化器系の問題（過敏性腸症候群）なども含まれます。特に、痛みが睡眠に悪影響を与えることが多く、患者の約90%は睡眠障害を抱えていると言われています。

この病気は精神的ストレスに対する感受性が高まり、抑うつ症状や不安感を引き起こすこともあります。患者はしばしば、自身の痛みを理解してもらえずに「怠け病」と誤解されることが多く、社会的な孤立感を感じることもあります。このような状況は、患者のメンタルヘルスにも影響を及ぼし、さらなる悪化を招くことがあります。

発症と診断

線維筋痛症の発症は様々な要因が考えられていますが、外的要因（外傷、ウイルス感染、ストレス）と内的要因（遺伝的素因）に分けられます。診断は難しく、血液検査や画像診断では異常が見つからないことが多いため、圧痛点を基にした診断が主に行われています。日本国内での認識はまだ低く、多数の患者が未診断や誤診に悩まされています。

治療とケア

治療法は多岐にわたりますが、薬物療法や心理療法、運動療法が効果を示すことがあります。抗うつ薬や抗てんかん薬（デュロキセチンやプレガバリンなど）が疼痛緩和に役立つことが実証されています。また、理学療法やメンタルヘルスのサポートも重要です。有酸素運動やストレッチなどの運動が症状緩和に効果的である一方で、痛みがあるからといって動かないことは逆効果とされ、ほどほどの運動を心掛けることが推奨されています。

社会的問題

線維筋痛症の患者は、十分な医療やサポートが受けられない現状にあります。日本国内では患者の認知度が低く、難病指定になっていないため公的支援も限られています。患者間での情報共有や啓発活動が求められており、5月12日には「国際啓発デー」が開催され、線維筋痛症に対する理解や認識を広める活動が行われています。

結論

線維筋痛症は、身体的な症状だけでなく、精神的な影響も大きい疾患です。理解とサポートが必要であり、患者の苦痛を軽減するためには社会全体の協力が不可欠です。今後の研究や治療法の進展が期待される中、医療現場や社会が連携して、患者が安心して生活できる環境を整えることが求められています。

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