能取岬灯台

能取岬灯台（のとろみさきとうだい）

北海道網走市美岬、オホーツク海へ張り出した能取岬の突端に、能取岬灯台は静かにその姿を見せています。この灯台は、黒と白のストライプ模様が施された八角形の洋風建築という特徴的な外観を持ち、地域の象徴として親しまれています。そのデザインは、フランスの技師レオンス・ヴェルニーが手掛けた、江戸時代末期に締結された条約に基づき建設された灯台群の様式に影響を受けていると考えられています。

歴史

能取岬灯台の歴史は、大正時代初期に遡ります。当時の逓信省が推進した航路標識整備事業の一環として計画・建設が進められ、1917年（大正6年）10月1日に初めて灯台として点灯を開始しました。同時に、海上を航行する船舶に霧の発生を知らせる霧信号の運用も始まり、視界の悪い日には欠かせない存在となりました。

建設当初、そして1948年（昭和23年）頃までは、灯台に付属する宿舎に灯台守とその家族が常駐し、昼夜を問わず灯台の保守管理や業務にあたっていました。しかし、その後は体制が変わり、網走市内の事務所から派遣された二名の職員が、六日ごとに交代で勤務にあたる形となりました。

オホーツク海沿岸という厳しい環境にあるため、冬季には流氷が沿岸部を覆い尽くし、船舶の航行が事実上不可能となります。このため、例年2月から3月にかけての期間は、灯台業務も一時的に休止されていました。

時代の進展と共に、灯台の設備も近代化されていきました。

1966年（昭和41年）には、光源がそれまでの灯油ランプから電球へと変更され、光力が強化されました。
1980年（昭和55年）4月には、設備の自動化が進み、灯台は無人化されました。これにより、灯台守による常駐勤務は完全に終了しました。
1989年（平成元年）には、気象情報の伝達手段の変化などにより、開設当初から続いていた霧信号の業務が廃止されました。
1996年（平成8年）には、電源が商用電力から太陽電池へと切り替えられ、環境負荷の低減と安定した電力供給が図られました。
* そして、比較的近年である2017年（平成29年）9月には、灯台本体の改修工事が行われ、施設の維持管理が続けられています。

地理

能取岬は、オホーツク海に面した標高およそ42メートルの比較的平坦な海岸段丘が、そのまま海へと突き出した地形をしています。灯台は、この岬の最先端、まさに海のすぐそばに位置しており、広大な海原を見渡す絶好の場所に立っています。

灯台周辺の一帯は、「網走市営美岬牧場」として整備・利用されています。例年、5月から10月頃にかけての時期には、牧草地でのびのびと草を食む牛や馬の姿を見ることができ、オホーツク海の青と牧場の緑、そして灯台の白黒コントラストが織りなす美しい景観を楽しむことができます。

アクセス

能取岬灯台へ向かうには、公共交通機関の最寄り駅であるJR石北本線または釧網本線の網走駅から、車でおよそ20分程度の距離にあります。

能取岬灯台は、航海の安全を守る役割を終えた後も、地域の歴史を見つめ、訪れる人々に美しい風景を提供するシンボルとして、能取岬に立ち続けています。

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