能登川駅

滋賀県東近江市の要衝、能登川駅

滋賀県東近江市林町に位置するJR西日本東海道本線（琵琶湖線）の能登川駅は、1889年（明治22年）7月1日、官設鉄道の駅として開業しました。東海道本線の開業区間の中でも最も古い駅の一つであり、長い歴史と深い地域との繋がりを持つ駅です。東近江市内のJR駅としては唯一の駅であり、私鉄を含めた全14駅の中でも最も乗車人員が多いことから、東近江市の交通の中枢を担っていると言えるでしょう。

駅の歴史：明治から令和へ

能登川駅の開業は、東海道本線の延伸開業にともなうものでした。当初は現在の場所から約1km京都寄りの場所に設置される予定でしたが、地質の軟弱さから現在の場所に変更されました。駅名の由来となった能登川村は、琵琶湖に繋がる港町として栄えており、その知名度から駅名に採用されました。

その後、1935年（昭和10年）に旧駅舎が完成し、1972年（昭和47年）に貨物取扱いを廃止、1986年（昭和61年）には新快速の停車駅となりました。1987年（昭和62年）の国鉄分割民営化を経て、JR西日本に移管。1998年（平成10年）には自動改札機が導入され、2003年（平成15年）には橋上駅舎への改築が完了。さらに、ICOCAの利用開始や駅ナンバリングの導入など、時代とともに進化を遂げてきました。2019年には駅開業130周年を記念した式典も開催されました。

駅舎と周辺環境：水車と近代都市開発

2003年に完成した橋上駅舎は、能登川町のシンボルである水車をモチーフとしたデザインが特徴的です。駅舎内にはエレベーターやエスカレーター、多目的トイレなどが設置され、バリアフリーにも配慮されています。

駅周辺は、開業当初は桑畑が広がる土地でしたが、駅開業を機に多くの商家が移転し、発展してきました。かつては日清紡能登川工場があり、地域の経済を支えていましたが、2001年に閉鎖。跡地は現在、再開発が進められています。2003年の橋上駅舎完成と西口広場の完成、駅西側の土地区画整理事業により、駅西側は新たな都市開発が進み、高層マンションが建設されるなど、近代的な街並みが形成されつつあります。一方、東口周辺は、戦前から続く商店街が残っており、歴史と現代が共存するエリアとなっています。

駅構造とアクセス：複数のホームとバス路線

能登川駅は、単式ホーム1面1線と島式ホーム1面2線、計2面3線のホームを持つ地上駅です。日中は1時間に3本の電車（新快速1本、普通2本）が停車し、朝夕は本数が増加します。また、一部の上り列車では、新快速と普通列車の緩急接続が行われています。

駅へのアクセスは、近江鉄道バスが駅東口と駅西口に停車しており、周辺地域からのアクセスも良好です。バス路線は、能登川周辺だけでなく、八日市駅や周辺の集落を結ぶ路線も運行しています。

能登川駅の未来：発展を続ける街の拠点

能登川駅は、明治時代からの歴史と、現代の都市開発が融合した、魅力的な駅です。歴史を刻んできた駅舎、発展を続ける街、そして便利な交通アクセス。能登川駅は、東近江市の発展を支える重要な拠点として、今後もその役割を果たしていくことでしょう。

参考文献

『ふるさと百科 能登川てんこもり』所収 辻良樹「能登川駅誕生の秘話」同「能登川駅の今昔」能登川町 1997年発行
辻良樹『関西 鉄道考古学探見』JTBパブリッシング 2007年発行

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