荒井山

荒井山：札幌市民に愛された丘陵

荒井山は、札幌市中央区宮の森に位置する標高185メートルの丘陵です。山というよりは、大倉山の東側に広がる扇状の地形をしています。その名前は、かつてこの地を所有していた荒井保吉氏に由来します。

琴似川を挟んで神社山と向かい合う荒井山は、古くからスキーの適地として知られていました。戦後、札幌市がこの地を買い上げ公園として整備したことで、四季を通じて市民の憩いの場となっています。しかし、宅地開発が進み、かつては木々が生い茂っていた周辺の景観は大きく変化しました。

荒井山スキー場の歴史

荒井山がスキー場として注目を集めるようになったのは、1928年（昭和3年）の秩父宮雍仁親王の訪問と、翌年に建設されたシャンツェがきっかけでした。1938年（昭和13年）発行の『スキー北海道』には、「照明設備が整った広大な夜間練習場」として紹介されています。

1956年（昭和31年）には、北海道で初めて一般向けのスキーリフトが設置されました。藻岩山の札幌スキー場にもリフトがありましたが、こちらは進駐軍のアメリカ人向けのものでした。長年市民に親しまれた荒井山スキー場でしたが、郊外に大規模なスキー場ができたことで利用者は減少し、2000年（平成12年）に休止となりました。

荒井山シャンツェ

荒井山には、札幌市内で最も古いスキージャンプ台である荒井山シャンツェが現存しています。改修と改名を重ねながら、現在も利用されています。

1928年（昭和3年）2月、秩父宮雍仁親王が北海道を訪問し、札幌近郊の山々やニセコでスキーを楽しまれました。その際、秩父宮雍仁親王は「将来日本でオリンピックを開催するなら、山が近く、雪質に恵まれ、大都会であり大学もある札幌が最適だ。そのためにはオリンピック用のシャンツェが必要だ」という構想を周囲に語りました。

当時、日本国内にはオリンピック級のジャンプ台を設計できる者がいなかったため、全日本スキー連盟会長の稲田昌植と木原均（ともに北大スキー部OB）が、秩父宮雍仁親王にその旨を伝えました。その結果、大倉喜七郎を通じてスキー先進国ノルウェーから専門家を招き、設計を依頼することになりました。ノルウェー公使の尽力により、ノルウェースキー界の重鎮であり、シャンツェ構築の世界的権威であるヘルセット中尉が来日することになりました。

1929年（昭和4年）12月、ヘルセット中尉の指導のもと、広田戸七郎が設計した木製の40メートル級シャンツェが完成しました。これは、秩父宮と高松宮宣仁親王の来訪を記念して「荒井山記念シャンツェ」と名付けられました。

その後、1940年（昭和15年）には北海タイムス社の出資で改修が行われ、45メートル級の「タイムス記念飛躍台」となりました。1954年（昭和29年）には、森永製菓が鉄骨で改造したシャンツェを寄贈し、「森永記念シャンツェ」と呼ばれるようになりました。1973年（昭和48年）には25メートル級シャンツェが新設され、1981年（昭和55年）11月にはK点50メートルのミディアムヒルとK点25メートルのスモールヒルの2基体制となりました。

スキー場閉鎖後もシャンツェは存続し、2001年（平成13年）から2003年（平成15年）にかけて全面改修が行われました。現在はサマーヒル化され、K点55メートルのミディアムヒルとK点25メートルのスモールヒルの2基体制で、主に小中学生が利用しています。

交通アクセス

札幌市営地下鉄東西線円山公園駅より、ジェイ・アール北海道バス円14「荒井山」下車



参考文献

• - 『冬のスポーツ』さっぽろ文庫16
• - 『札幌の山々』さっぽろ文庫48

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