蓄音機

蓄音機（ちくおんき）

蓄音機は、音声や音楽を記録し再生する機械で、狭義には電気を使用しない機械式のものを指し、広義には電気を用いたものも含まれます。この装置は19世紀半ばから開発が進められ、特に精密な技術が求められました。

歴史

機械式蓄音機の発明

1860年代頃、フランス人のエドゥアール＝レオン・スコット・ド・マルタンヴィルが発明したフォノトグラフが音を記録するための初めての装置でしたが、当時の技術ではそれを再生することはできませんでした。その後、1877年にトーマス・エジソンが錫箔を使用するフォノグラフを発明し、これが初めて音を実際に再生することが可能となります。この技術はその後も発展し、LPレコードのような新しい形式に受け継がれることになります。

エジソンは音による録音機器の商業化に乗り出しましたが、その初期のフォノグラフは音質が低く、精度にも欠けていました。1888年には、彼の競争相手であるチャールズ・サムナー・テンターらが改良した蓄音機が開発され、蝋を使用したより高精度な再生が可能となりました。

欧米での普及

1890年代から、蓄音機は学術研究の手段としてもその重要性が増し、アメリカでは先住民族の歌などの収録が行われました。特に、Jesse Walter Fewkesは1890年にパサマクォディインディアンの文化を記録したことで、音声録音の重要性が認識されるようになります。

また、ヨーロッパでは録音アーカイブが設立され、ウィーンの録音アーカイブはその先駆けとなりました。1900年のパリ万国博覧会では、録音プロジェクトが実施され、大きな注目を集めました。

日本での蓄音機の普及

日本では1877年に横浜に初めて蓄音機が導入され、1907年には松本武一郎が国産品の製造を開始します。「ニッポノホン」という名前の蓄音器が登場し、日本国内での普及が進みました。その後、音の再生技術としての蓄音器は昭和初期に多くの会社が参入する時期を迎え、飛躍的に普及が進みました。

特に1937年にはフィルモン社が独自のシステムを開発し、日本の音楽文化の一端を担いました。

電気式蓄音機への移行

技術の進展とともに、真空管を利用した電気式蓄音機が登場します。これにより、音声信号を電気信号に変換し、増幅することが可能となります。この新しいフォーマットは、LPレコードの再生にも必要不可欠となりました。1940年代にはポータブル電蓄が家庭に普及し、オーディオ機器としての地位を確立しました。

蓄音機に関するアーカイブ

アメリカのトマス・エディソン国立歴史公園や、シラキュース大学のアーカイブでは、歴史的な録音資料が管理され、保存されています。これらのアーカイブには、蓄音機の発展に関する貴重な資料や、初期の音声録音のコレクションが含まれています。

音の日と記念日

日本オーディオ協会は12月6日を「音の日」と定めており、これがエジソンの蓄音機による録音の成功にちなんでいることは有名です。音声の記録と再生の歴史は、蓄音機なしでは語ることができないのです。

技術が進化し、さまざまな形で残されている音声記録は、未来の世代に文化の記憶を伝える重要な手段となっています。

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