藍田

香港・藍田（ラムティン）地区の詳細解説

概要

藍田（ラムティン、英語表記: Lam Tin）は、香港の南東部、観塘区に位置する地区です。かつては「鹹田（塩田）」と呼ばれた場所で、塩の生産地として知られていましたが、1980年代以降の大規模な都市開発によって、主要な住宅地へと変貌を遂げました。現在では、交通の要所として、また多くの商業施設や公共施設が集まる場所として、多くの人々が生活しています。

範囲

かつて藍田は、鯉魚門や油塘といった地域も含む広範囲を指していましたが、インフラや団地の建設が進むにつれて、その範囲は変化してきました。現在では、西を麗港城、南東を広田村、北を将軍澳トンネルの入口、南西をビクトリア・ハーバーとするのが一般的です。

地理

藍田の東には五桂山（ブラックヒル）がそびえ立ち、その地盤は白亜紀に形成された香港花崗岩で構成されています。この花崗岩は獅子山にも見られます。また、茶果嶺の西側の一部は、埋め立てによって造成された土地です。

行政

藍田地区全体は観塘区に属しており、行政上は観塘区の選挙区名としても使用されています。選挙区には、旧藍田団地エリアも含まれますが、一般的には、観塘区の複数の選挙区を含む広い地域を指して「藍田」という名称が用いられます。

観塘区議会選挙区（藍田地区内）

J17 廣徳 (Kwong Tak)
J18 興田 (Hing Tin)
J19 藍田 (Lam Tin)
J20 平田 (Ping Tin)
J21 栢雅 (Pak Nga)
J26 油塘西 (Yau Tong West)
J27 麗港城 (Laguna City)
J28 景田 (King Tin)

歴史

藍田の歴史は、紀元前9世紀頃、南越人が最初に居住した頃に遡ります。中国統一後の紀元前3世紀後半には、始皇帝が南越人を征服し、この地は「藍田」として中国の一部となりました。当時は「鹹田山（塩田の丘）」と呼ばれ、塩の生産地として栄えました。宋の時代には、公式に塩田が運営され、周辺地域に富をもたらしました。しかし、1662年に康熙帝が沿岸住民を内陸へ移住させたことで、塩田は一時的に放棄されました。その後、1669年に住民は帰還を許されましたが、塩田が再び発展することはありませんでした。

1841年にイギリスが香港を獲得し、九龍湾塩田の西半分が1860年に、東半分が1898年にイギリス領香港に編入されました。20世紀に入ると、啓徳空港建設のための埋め立てによって塩田は消失し、長年塩の生産地であった「鹹田」は、発音の似た「藍田」に改名されました。藍田という名称は、「青い土地からつくられる翡翠」を意味する「藍田生玉」という言葉に由来するとされています。正式に「藍田」という名称が承認されたのは1970年9月1日です。

1960年代には、中国本土からの人口流入に対応するため、植民地政府が藍田団地を建設しました。この団地は藍田のシンボルとなり、その周辺地域を指す名称として「藍田」が使われるようになりました。藍田団地のブロック15に描かれた龍のエンブレムは、1998年の取り壊しまで藍田の象徴でした。その後、藍田団地の土地は、平田団地、啓田団地、徳田団地、広田団地へと再編されました。

20世紀後半には、觀塘バイパス、東区海底トンネル、MTRといった主要な交通インフラが建設され、藍田は交通の要所となり、人口増加を加速させました。

インフラ

藍田は、香港において最も重要な交通拠点のひとつとして知られています。東九龍のバスや鉄道が頻繁に発着する乗り換え駅としても機能しています。

高速道路と道路交通

鯉魚門道: 観塘と鯉魚門を結ぶ最初の道路。
茶果嶺道: 茶果嶺へのアクセス道路として建設。後に拡張され、7号線の一部となる。
啓田道: 1960年代に建設された、藍田団地へのアクセス道路。丘を越える形で建設され、注目を集めた。
平田街、安田街、徳田街: 藍田団地全域をカバーするために建設された道路。団地の再建後、新しい居住区の名称として使用されている。
東區海底トンネル: 1989年に完成。観塘バイパスと接続。
将軍澳トンネル: 1990年に建設され、将軍澳へのアクセスを向上させた。
偉發道: 交通渋滞緩和のために建設された幹線道路。
碧雲道、連徳道: 1992年に建設。藍田丘に新しくできた地域へのアクセスを容易にした。
澳景路: 旧宝琳南路を再建し、調景嶺ニュータウンへと繋げた。

MTR（香港鉄路）

1979年から1989年にかけて、MTR観塘線が観塘駅まで開通し、その後、鰂魚涌駅まで延長されました。この際に、藍田駅も新設され、1989年11月8日に開業しました。この駅の開業は、藍田への人口流入を加速させる要因となりました。藍田駅は観塘線の一部であり、調景嶺駅の3つ手前に位置しています。

路線バス

藍田には複数のバスターミナルがあり、多くのバス路線が乗り入れています。初期の藍田バスターミナルは後に「徳田バスターミナル」と名称を変更され、MTR藍田駅のバスターミナルが「藍田バスターミナル」と呼ばれるようになりました。藍田には、以下の5つの主要バスターミナルが存在します。

藍田バスターミナル（MTR藍田駅バスターミナル）
麗港城バスターミナル
平田バスターミナル
徳田バスターミナル（藍田（北）バスターミナル）
広田バスターミナル（藍田（広田団地）バスターミナル）

藍田を通過するバス路線は60路線以上あり、香港の主要な交通ハブとしての役割を果たしています。

海上交通

藍田は丘に囲まれており、ビクトリア・ハーバーに直接アクセスすることはできません。しかし、観塘フェリー埠頭や鯉魚門埠頭が徒歩圏内にあり、水上交通も利用できます。また、東区海底トンネルの存在により、フェリーよりも早く湾を横断できるバスやMTRが利用可能です。

住民

藍田には、公営住宅と私営住宅の両方が混在しています。初期の公営住宅である藍田団地は、1960年代から1970年代にかけて建設され、人口流入に対応しました。その後、1980年代後半には最初の私営住宅が完成し、1990年代には、藍田団地は再開発され、平田団地、徳田団地、啓田団地などに生まれ変わりました。

藍田団地

藍田団地は、1番から24番までの超高層マンションで構成されていました。このうち1番から14番までは1962年から1965年の間に、タイプ4の公共住宅として建設され、残りの10のタワーは1969年から1975年の間にタイプ6の公共住宅として建設されました。15番の建物には、中国の統一を象徴する龍のエンブレムが描かれており、藍田のシンボルとなっていました。

麗港城と匯景花園

麗港城（ラグーナ・シティ）と匯景花園は、藍田にある初期の大規模私営住宅です。両方とも長江実業によって建設され、1990年代初頭に完成しました。匯景花園は藍田駅の上に建てられており、麗港城はウォーターフロント沿いに位置しています。麗港城の一部は、埋立地に建設されています。

藍田の団地一覧

油塘の高俊苑、高怡村や、調景嶺の馬遊塘村も藍田の一部として認識されることがあります。

施設

藍田には、住民の生活を支える様々な施設が充実しています。

商業施設

多くのショッピングモールや市場があり、日用品の購入に便利です。団地内には、生鮮市場を併設したショッピングモールも存在します。

娯楽

藍田には、藍田公園や晒草湾遊楽場などの公共公園、レクリエーショングラウンド、屋内スポーツセンターがあります。また、ウィルソン・トレイルの一部も藍田に位置しています。藍田公園からは、藍田全体とビクトリア・ハーバーの美しい景色を一望できます。

晒草湾遊楽場は、かつてゴミ処理場だった場所を再開発して建設されました。この遊楽場には、ランドフィルガスコントロールシステムや浸出液処理システムが備わっています。

供給

藍田の地下には、水道水、都市ガス、家庭用電線のネットワークが整備されています。電力は中華電力、都市ガスは香港中華ガスが提供しています。上水道は、東江などからパイプラインで貯水池へ送られ、各家庭に供給されます。藍田には、藍田上水道水貯水池と藍田下水道水貯水池の2つの貯水池があります。

ゴミ処理

1978年から1981年にかけて、東九龍では晒草湾ゴミ処理場が利用されていました。その後、埋め立てられて晒草湾遊楽場として再利用されています。また、かつて藍田公園の近くにあった馬遊塘ゴミ処理場も、埋め立てによって草原に姿を変えています。現在、藍田で排出されたゴミは、九龍湾の施設で圧縮され、新界東南ゴミ処理場へ運ばれています。

学校

藍田には、多くの学校が存在します。幼稚園、小学校、中学校のほか、インターナショナルスクールもあります。

中学校

藍田聖保禄中学
聖公会基孝中学
五邑司徒浩中学

小学校

聖公会徳田李兆強小学
聖愛徳華天主教小学
聖公会李兆強小学
藍田循道衛理小学

インターナショナルスクール

ノードアングリア・インターナショナルスクール香港（聖言中学跡地）

出典

Centamap
District Council Electoral Boundaries - Kwun Tong District - Election Affairs Commission, HKSAR.
Environmental Protection Department
Fun in Kwun Tong
History of Tseung O
Hong Kong Place
Hong Kong Strategic Route and Exit Number System - Transport Department, HKSAR.
LegCo website
* Sceneway Garden

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