虚血性心疾患

虚血性心疾患（IHD）について

虚血性心疾患（きょけつせいしんしっかん、Ischemic Heart Disease、IHD）は、冠動脈の閉塞や狭窄によって心筋への血流が妨げられ、心臓に障害を引き起こす疾患の総称です。代表的なものに狭心症や心筋梗塞があり、これらは一般に冠動脈疾病として知られています。ただし、冠動脈に特に病変がない場合でも、たこつぼ心筋症や中枢性肺水腫のような状況は虚血性心疾患の一部とみなされることがあります。

発祥と歴史

アメリカでは1950年代から心臓病患者の増加が顕著となり、朝鮮戦争での分析により冠動脈に動脈硬化が確認されました。これを契機に、虚血性心疾患と動脈硬化の関連性が認識されるようになりました。一方、日本でも同様の問題がありました。1979年には東京都で休日救急体制が導入され、医学の進歩により積極的な治療が行われるようになりました。

病態メカニズム

心臓を囲む冠動脈は心筋に酸素と栄養を供給しています。この血管が閉塞または狭窄すると、心筋への血液供給が不足し、心筋虚血の状態になります。動脈硬化などによる狭窄が進行すると、胸痛を伴う狭心症や最終的に心筋梗塞に至る可能性があります。さらに、虚血による心筋の収縮力低下は心不全を引き起こすこともあり、これを虚血性心不全と呼びます。

危険因子

日本国内での虚血性心疾患に関連するリスク因子は多岐にわたります。具体的には、以下の点が挙げられます：

• - 加齢：特に男性は45歳以上、女性は55歳以上。
• - 家族歴：冠動脈疾患の家族歴（親、祖父母、兄弟姉妹）。
• - 喫煙：たばこは心疾患のリスクを高める要因の一つです。
• - 高血圧：収縮期血圧が140以上、または拡張期血圧が90 mmHg以上の場合。
• - 肥満：BMIが25以上、ウエスト周囲径が男性85 cm、女性90 cm以上。
• - 耐糖能異常：糖尿病型や境界型の人。
• - 高コレステロール：総コレステロールが220 mg/dL以上やLDLコレステロールが140 mg/dL以上。
• - 高トリグリセリド：150 mg/dL以上。
• - 低HDLコレステロール：40 mg/dL未満。
• - メタボリックシンドローム：ストレスによる精神的・肉体的な影響。

日本における死亡者数

日本の疾病別死亡者数を見てみると、1954年には虚血性心疾患は死因の5位にランクされました。その後、1955年から1984年までは3位、1985年から1996年までは2位を占めています。2018年には136万2470人の死亡者の中で、虚血性心疾患に起因する死亡者数は20万8221人、全死亡者に対して約15.3%を占めました。

結論

虚血性心疾患は心臓に深刻な影響をもたらす病気であり、予防や早期発見が重要です。適切な治療法としては、薬物療法、冠動脈バイパス術、経皮的冠動脈形成術などが考えられます。心疾患に対する認識を高め、健康な生活習慣を心掛けることが、リスクを低減する鍵となります。

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