言論の自由

言論の自由について

言論の自由（げんろんのじゆう）、英語でいうところの "Freedom of speech" とは、誰もが自身の思想や信念を干渉を受けずに表現できる権利を指します。この自由は自由権の一つであり、言論や表現が民主的社会の基盤を成すことから、極めて重要な概念です。

概念と歴史

言論の自由という考え方は、古代ギリシャの「パレーシア」にさかのぼります。プラトンは著作『国家』の中で、民主主義の特徴として「放任」とともに「言論の自由」を挙げ、言論が自由な社会は人々にとって重要であることを示しました。現代では、言論の自由は表現の自由を裏付けるものであると考えられています。これは国際人権法によっても保護されており、世界人権宣言第19条や市民的及び政治的権利に関する国際規約（自由権規約）にも明記されています。

言論の自由と表現の自由

言論の自由は、音声による表現を第一義とし、出版は主に文字を使って行われますが、一般的には広義に「言論の自由」として扱われます。表現の自由において、この「言葉を通す自由」は「発言の自由」としても知られています。

自由の原理

言論の自由は18世紀以降の人権の確立と深く結びついています。1776年のアメリカのバージニア権利章典や1789年のフランス人権宣言などがその例です。自由主義普遍的観念によれば、個人が自由に表現することによって形成される「思想の自由市場」が、相互に激しい競争をしながら真理を導き出し、社会の進歩を促しているとされています。

また、民主政治においても、権力の正当性は市民の同意によって成り立つものであり、この同意は自由な表現のもとで形成されなければならないとされています。そのため、言論の自由は民主主義に不可欠な要素であり、国民にその自由がなければ真の主権者とは言えません。

アメリカの最高裁判所判事ロバート・ジャクソンは、「われわれは被治者の同意による政府を樹立した。公権力は世論によって制御される必要があり、逆ではない」と述べています。一方、オリバー・ウェンデル・ホームズは、権力者が自己の思想を強固に信じるほど、反対意見を抑圧しようとする傾向に警鐘を鳴らしています。

日本における言論の自由

日本で言論の自由が最初に保障されたのは1889年の大日本帝国憲法においてであり、ここで日本臣民は法律の範囲内で言論、著作、出版の自由が認められました。しかし実際には、様々な出版物が検閲され、多くの政党は解散命令を受けるなど、自由は実質的には制限されていました。

1947年に施行された日本国憲法では、人権が「侵すことのできない永久の権利」として位置づけられ、特に表現や出版の自由については更に保障が強化されました（21条）。ただし、違法な表現（例えばわいせつ物頒布など）に関しては、注意が必要です。

言論の自由に関する諸問題

日本においては、言論の自由に関するさまざまな問題が存在しています。歴史的な事件としては、久米邦武筆禍事件や国民新聞社襲撃事件、天皇機関説事件などが挙げられます。最近の例では、政府による放送命令や新潟日報社襲撃事件、さらにはSNS上での中傷問題なども言論の自由に関わる重要な論点となっています。

言論の自由は、私たちに与えられた重要な権利ですが、その行使には常に注意が必要であり、個人の名誉や他者の権利を尊重することが求められます。また、国によっては歴史的事実に関する言論が厳しく制約される場合もあるため、国際的な観点からも注意が必要です。

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