谷永

谷永の生涯と業績

谷 永（こく えい、? - 紀元前8年）は、前漢後期の著名な政治家で、長安出身でした。彼は字を子雲とし、元の名は並でしたが、永始3年（紀元前14年）に樊並という人物による反乱が起きた際に谷永と改名しました。

家族背景と若き日々

谷永の父、谷吉は匈奴の郅支単于に使者として派遣された際に命を落としました。この悲劇的な背景を持つ谷永は、長安で小吏として働きながら、経書を広く学びました。彼は学問に励む中で、その名声が徐々に高まりました。

政治的台頭

建昭年間、御史大夫の繁延寿は谷永の評判を聞き、彼を属官として迎え入れました。その後、谷永は太常丞に昇進し、政治問題について頻繁に上奏を行うようになりました。特に建始3年（紀元前30年）、日食と地震が同時に発生した際、成帝が直言できる賢者を推挙した際に谷永が取り上げられました。彼はこの機会に、自分の考えを成帝に正直に伝えました。

谷永は、日食や地震は皇后の寵愛が偏っていることに起因すると指摘し、多くの者たちが災異の原因を大将軍王鳳に求めている中で、王鳳に近づこうとはせず、むしろ皇后の子孫繁栄のために多くの者を後宮に迎えるべきだと提案しました。この提言は、正直な意見として評価されました。

経済政策と後宮関連の論争

その後、谷永は光禄大夫に昇進し、王鳳への謝辞を述べます。何年か後、彼は安定太守に任じられました。王鳳の弟、王譚と親しい関係を築いた谷永は、陽朔3年（紀元前22年）に王鳳が死去する際、王譚に対して不必要な権限を持たないように助言をしました。その後、王音が大司馬として権力を持ち、谷永は彼から逃れるための手段として病気を理由に職を辞したものの、王音の取り計らいで再び官職に戻ることとなりました。

失脚と最期

谷永はその後、成帝に対して後宮の規律を求める多くの上奏を行いましたが、これが彼の逆風を招く原因となりました。成帝は一時的に谷永を逮捕しようとしましたが、彼は逮捕を免れ、最終的には太中大夫に任命されることになります。元延元年（紀元前12年）、谷永は北地太守に昇進し、元延4年（紀元前9年）には大司農に昇進しました。しかし、綏和元年（紀元前8年）には病を理由に職を退くこととなり、その数ヶ月後、自宅で亡くなりました。

学問と業績

谷永は経書に非常に精通し、特に天文や『易経』の京房学説に秀でていました。また、彼の上奏は40回以上に及び、その主な内容は皇帝や後宮への厳しい批判でした。しかし、成帝は彼が王氏に与していることを知っていたため、谷永に完全に信頼を寄せることはありませんでした。谷永の生涯は、権力の変動と複雑な人間関係に翻弄されたものでした。彼の行動は、当時の政治事情を反映しているといえます。

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