跡部良弼

様々な官職を歴任した跡部良弼

跡部良弼（あとべ よしすけ）は、江戸時代後期、幕末に活動した旗本・幕臣である。彼は肥前唐津藩主の水野忠光の六男で、老中水野忠邦の実弟であった。通称は季十郎や大膳であり、官位は従五位下山城守とされ、多くの役職を歴任した。

生涯の経歴

良弼は跡部家に養子として迎えられたが、実兄の威光を利用し、周囲との間で数々のトラブルを引き起こしていた。やがて彼は駿府や堺の町奉行を経て、大坂の東町奉行に任命される。在任中の大坂では米価の急騰が発生し、これにより多くの住民が餓死してしまう事態が発生した。

彼は当初、この米価暴騰に対する適切な対策を講じなかっただけではなく、豪商による米の買い占めを傍観し、また町奉行所のもとで陽明学者の大塩平八郎の提案する救民計画を無視した。結果として米価はさらに高騰し、この状況が1847年の大塩の乱の直接の原因とされることが多い。

とはいえ、実際には大坂の町奉行は米価対策を実施しており、堂島米取引不正禁止令や米相場抑制令等、多角的な施策を試みていた。その努力にもかかわらず、米不足は深刻化していった。江戸への米の移送は、江戸における住民の食料確保を目的としていたとの見方もあるが、良弼の姿勢は後に変化し、大坂の米が流出するのを防ぐような措置を講じるようになった。

大塩の乱とその後の政治的影響

大塩の乱が発生すると、良弼も鎮圧に出動したが、敵方の砲声に驚いて落馬してしまうという屈辱的な事件が記録されている。乱は鎮圧されたものの、大坂の町の多くが破壊される惨事となった。

その後、良弼は責任を問われることなく大目付、勘定奉行へと昇進していく。1842年には、将軍の謝参準備のため日光へと向かう途中、同宿場の藩主を強制退去させたエピソードも残る。これに対して、伊達家からの強硬な抗議が寄せられた。

兄である忠邦が失脚した後も、良弼は政治的な地位を維持し続けた。一説には、忠邦が重用した鳥居耀蔵との相性が悪く、政治的同調を避けていた結果、連座せずに済んだとも言われている。その後、彼は多くの役職—江戸南町奉行や小姓組番頭、留守居、そして江戸北町奉行など—を歴任した。

最期と影響

幕末の慶応4年（1868年）、良弼は若年寄に任じられたが、わずか7日後に免職となる。翌1869年12月20日、良弼は70歳で逝去した。

彼の生涯は江戸幕府の政治動向や、当時の社会経済情勢の変化と密接に関連しており、数々の逸話や出来事は後の研究にも影響を与えた。

演じられた人物

その人物像は、片岡千恵蔵や楠年明によって映像作品でも演じられており、彼の複雑な政治的役割が現在まで語り継がれていることを示している。

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