道信

道信（どうしん）

道信は、中国禅宗における第四祖として知られる高僧です。諡号は大醫禅師。彼は、蘄州黄梅県（現在の湖北省黄岡市武穴市付近）を中心に教えを広め、弟子である五祖弘忍と共に「東山法門」と呼ばれる禅宗の一大勢力を築き上げました。この東山法門は、後の禅宗の発展における重要な母胎となったとされています。

生涯

道信の俗姓は司馬氏と伝えられていますが、確かな出身地については諸説あります。後世の資料である『景徳伝灯録』などでは、河南省焦作市温県出身とされていますが、『続高僧伝』では出身地は不詳とされています。

道信は蘄州永寧県で生まれ、7歳で出家しました。仏門に入るとすぐに沙弥十戒を授けられ、沙弥となりました。14歳（数え年）の時、舒州皖公山（現在の安徽省安慶市潜山市）にて、禅宗の第三祖である僧璨（そうさん）を訪ね、9年間マンツーマンで禅の修行に励みました。僧璨は第二祖慧可の入滅後、間もなく道信に教えを授けたとされ、二人の師弟関係は非常に密接なものであったと考えられています。

その後、道信は吉州の寺で受戒し、僧璨から衣法（伝法の証として袈裟を授けること）を受け継ぎました。この時、僧璨が道信に伝えたとされる偈（げ）は、「花の種が田畑にまかれ、みずみずしい若花を大地から生じさせるように、仏法もまた広めなければならない」という教えを説いたものでした。これは、道信が仏法を広める使命を自覚する上で重要な転機となったと推測されます。

布教のため南嶽衡山へ向かおうとした道信でしたが、道中で多くの人々に引き留められ、江州廬山の大林寺に入ることとなりました。その後、武徳7年（624年）に蘄州黄梅県の双峰山に入り、30年間にわたり弟子の指導に尽力しました。そして永徽2年（651年）、72歳でその生涯を終えたとされています。

著作と伝記

道信の著作としては、『入道安心要方便法門』が知られています。これは『楞伽師資記』に収録されています。

また、彼の伝記は以下の文献に記されています。

『続高僧伝』卷21「唐蘄州双峰山釈道信伝」
『続高僧伝』巻26「蘄州双峰寺釈道信伝」
『景徳伝灯録』巻4「第三十一祖道信大師」

これらの記録を通して、道信が禅宗の発展に果たした役割の大きさを知ることができます。

関連事項

灯史
* 禅宗史書一覧

道信は、その教えと生涯を通して、禅宗の歴史において重要な位置を占めています。彼の築いた東山法門は、後の禅宗に大きな影響を与え、今日の禅宗の礎を築いたと言えるでしょう。

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