弘忍

弘忍（ぐにん／こうにん）

弘忍は、中国禅宗において五祖と位置づけられる重要な僧侶です。唐の時代には、代宗から大満禅師の諡号と法雨塔の塔号を贈られました。俗姓は周氏とされ、蘄州黄梅県（現在の湖北省黄岡市黄梅県）の出身であるとされていますが、『宋高僧伝』には江州潯陽県（現在の江西省九江市柴桑区）出身とする説も記録されています。

生涯

幼くして仏門に入り、12歳（『楞伽師資記』では7歳）で禅宗四祖である道信に師事しました。その後、黄梅県の馮茂山（東山）に移り住み、そこで教化活動に専念しました。弘忍は、中国禅宗の主流となる東山法門を発展させ、その後の禅宗発展の基礎を築いた人物として知られています。

『続高僧伝』には、師である道信の墓塔を建立した弟子として、弘忍の名前が記されています。『伝法宝紀』や『楞伽人法志』によれば、弘忍は道信のもとで肉体労働にも従事した朴訥な人物であり、自ら文章を著すことは少なかったと伝えられています。しかし、彼の教えとされる『修心要論』は存在し、晩年には多くの貴族や有力者が彼に帰依したとされています。

弘忍の弟子には、後の禅宗を代表する人物がいます。その一人が、両京（長安と洛陽）の法主となった大通神秀です。また、荷沢神会は、自らが七祖になろうと画策し、慧能を六祖に祭り上げました。これらの弟子たちによって、禅宗は北宗と南宗という二つの大きな流れに分かれ、唐代から宋代にかけて大きく発展することになります。

伝記資料

弘忍に関する主な伝記資料としては、以下のものが挙げられます。

『宋高僧伝』巻8「唐蘄州東山弘忍伝」
『景徳伝灯録』巻3「第三十二祖弘忍大師」
『伝法宝紀』
『楞伽師資記』

これらの資料を通して、弘忍の生涯や教えを知ることができます。

弘忍は、その質素な生活と実践的な教えによって多くの人々を導き、中国禅宗の発展に大きく貢献しました。彼の確立した東山法門は、後の禅宗に多大な影響を与え、今日に至るまでその教えは受け継がれています。

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