重雷装艦

重雷装艦について

重雷装艦（じゅうらいそうかん）は、日本海軍が太平洋戦争中に運用した特異な艦艇で、その主な特徴は魚雷攻撃能力に特化している点です。これらの艦艇は新たに建造されたものではなく、既存の艦艦を改装して使用しました。この「重雷装艦」という名称は、正式に法令で規定されたものではなく、実際に海軍がそのあたりの運用の中で選定したものでした。

背景

太平洋戦争前、日本海軍はアメリカ艦隊と遭遇した際の戦略を立案しました。アメリカの艦隊が太平洋を越えてくる時、まずは潜水艦や航空機を使って敵の戦力を削ぎ、その後主に戦艦が集結した艦隊で決戦を挑むという戦術が考えられていました。1936年5月、昭和天皇への上奏において、伏見宮博恭王が大和型戦艦と共に提案したのがこの重雷装艦という艦艇の概念であり、その後、日本海軍の作戦計画にも取り込まれました。

作戦方法

重雷装艦の運用では、遠距離からの隠密魚雷戦を主としました。これは敵艦隊への初撃として、遠距離からの魚雷発射によって多数の敵艦を沈め、艦隊そのものを混乱させ、さらに特殊潜航艇を投入して主力艦隊による撃滅戦につなげるという戦術です。この戦法が実現した背景には酸素魚雷の発明と実用化がありました。この魚雷は従来のものと異なり、20kmから30kmの長距離から攻撃可能で、雷跡がない特性を持っていました。

改装と艦艇

重雷装艦へ改装対象とされたのは、球磨型軽巡洋艦の北上、大井、木曾（実際には北上と大井のみが改装）であることが決定されました。この艦艇たちが選ばれた理由としては、1つには軽巡洋艦としての活用のしやすさ、2つ目には艦歴が豊富であったこと、3つ目には速やかな改装工事の実施が挙げられます。1941年には北上と大井の改装工事が行われ、艦体の工事や武装の変更が行われました。

この改装によって、北上と大井は片側に61cmの4連装魚雷発射管を5基、合計で10基装備し、合計40門もの魚雷を搭載することが可能になりました。これは史上かつてない規模の火力でありましたが、戦争が進むにつれて、戦艦や艦隊決戦から航空機が主役となる中、重雷装艦としての存在意義は薄れていきました。

戦歴とその後

1942年1月、改装を受けた北上と大井は第九戦隊として編成され、台湾輸送任務の護衛などを行いました。その後、1943年には解隊され、第十六戦隊に編入されます。さらには1944年に北上が潜水艦の攻撃で損傷を受け、修理を行う間に大井も沈没する事態となります。最終的に、北上は本土決戦に備えて人間魚雷回天を最大8基搭載する艦として編入されることになりました。

しかし、終戦を迎えると、重雷装艦もその役割を終え、戦後には工作艦として活動し、最終的には解体される運命を辿りました。日本海軍の重雷装艦は、当時の海戦の在り方や技術革新を反映しつつも、戦後の変化に適応できずに消えてしまった一時代の象徴とも言える存在でした。

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