金子國義

金子國義（かねこ くによし、1936年7月23日 - 2015年3月16日）は、日本の画家であり、その独特な画風と多岐にわたる活動で知られています。埼玉県蕨市で、織物業を営む裕福な家庭に四人兄弟の末っ子として生まれました。幼少期から図画工作や習字に秀でており、華道や茶道、バレエにも親しむなど、芸術への関心が非常に高い少年でした。

ミッションスクールの聖学院中学校・高等学校を経て、1959年に日本大学藝術学部デザイン学科に入学。大学在学中には、歌舞伎舞台美術家の長坂元弘に4年間師事し、舞台芸術の基礎を学びました。大学卒業後はグラフィックデザイン会社に就職しますが、わずか3ヶ月で退社し、フリーのデザイナーとして活動を開始します。1964年からは独学で油絵に取り組み始め、詩人の高橋睦郎や評論家の澁澤龍彦との交流を通じて、本格的に絵画制作に打ち込むようになりました。幻想小説の装丁や挿絵に描かれた魅力的な少女像は、たちまち注目を集め、金子國義の名を広く知らしめるきっかけとなりました。

1966年、澁澤龍彦の依頼で、当時翻訳中だった『O嬢の物語』の挿絵を手がけました。この作品がきっかけとなり、1967年には澁澤龍彦の紹介で、銀座の青木画廊にて個展「花咲く乙女たち」を開催し、画壇デビューを果たします。世紀末的でデカダンスな雰囲気を漂わせる妖艶な女性の絵は、多くの人々を魅了し、その後の金子國義の画風を特徴づけるものとなりました。

金子國義の活動は絵画制作にとどまらず、その表現領域は非常に幅広いものでした。「富士見ロマン文庫」や雑誌『ユリイカ』、『婦人公論』など、数多くの書籍や雑誌の装幀画・挿絵を手がけ、その独特な世界観を多くの人々に届けました。また、1998年には神保町に画廊「美術倶楽部ひぐらし」を開設し、自身の作品を紹介する場を設けました。イタリアの事務機器メーカーオリベッティ社が制作した絵本「不思議の国のアリス」の絵を担当したほか、劇団状況劇場の舞台美術や、バレエ公演「アリスの夏」「オルペウス」の構成・演出・美術も担当するなど、舞台芸術の分野でもその才能を発揮しました。

ファッションデザイナーのコシノジュンコとは古くからの親交があり、後に親友となる作詞家の安井かずみを金子國義に紹介したのもコシノジュンコでした。また、音楽家の加藤和彦のアルバムジャケット原画や、HANAE MORIビルのディスプレイを手がけるなど、ファッションや音楽の世界とも深く関わりました。歌舞伎界にも造詣が深く、2005年の中村勘三郎 (18代目)|中村勘三郎_(18代目)襲名披露興行、2012年の中村勘九郎 (6代目)襲名披露の口上の美術を担当するなど、日本の伝統芸能にも貢献しました。

さらに、ロックバンドL'Arc〜en〜Cielのhydeとも親交が深く、hydeからのラブコールを受けて、ソロアルバム「FAITH」のジャケットアートワークや、hydeが好むコウモリをモチーフにした浴衣のデザインを手がけました。このように、金子國義は、幅広い分野でその才能を発揮し、多くの人々に影響を与えました。

2015年3月16日、虚血性心不全のため、東京都品川区の自宅で逝去。78歳でした。金子國義の作品は、その独特の美意識と幻想的な世界観で、今もなお多くの人々を魅了し続けています。彼の残した作品や功績は、日本の美術史において重要な位置を占めています。

関連書籍も多数出版されており、「青空」「金子国義アリスの画廊」「お遊戯」「よこしまな天使」「OIL PAINTINGS 金子国義油彩集」「Drink Me Eat Me 金子國義写真集」「L’Elégance 金子國義の世界」「美貌帖」などが挙げられます。また、没後にも「ユリイカ 総特集：金子國義の世界」「金子國義（KAWADE夢ムック・文藝別冊）」「天守物語」「イルミナシオン」「金子國義スタイルブック」など、彼の作品をまとめた書籍が刊行されています。

金子國義は、その生涯を通じて、絵画だけでなく、文学、舞台、音楽、ファッションなど、さまざまな分野で独自の表現を追求し続けました。その作品は、時代を超えて、多くの人々にインスピレーションを与え続けています。

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