鏡文字

鏡文字について

鏡文字とは、文字の左右を反転させた特異な書き方であり、上下はそのままの状態で保持されます。このように書かれた文字や文章は、鏡で映すと通常の状態に戻って読みやすくなります。また、鏡文字は「鏡像文字」とも呼ばれます。

概要

鏡文字を書く事例が見られるのは、主に左利きの人や、5〜6歳までの子供に多いとされています。しかし、この現象の正確な原因は明らかになっていません。特に、左利きの人が右利きに矯正された場合、自然に鏡文字を書くことがあると報告されています。

さらに、学習障害や脳血管障害（脳卒中）、パーキンソン病、頭部外傷などの神経の障害が原因で鏡文字を書くケースも存在します。緊急車両には、運転手がバックミラーで容易に識別できるよう、前面に鏡文字で「AMBULANCE（救急車）」と表示されていることがよくあります。

古代のギリシャ文字やエジプトのヒエログリフでは、文字の進行方向や改行の仕方が右や左に限定されていなかったため、文字の向きをその都度小刻みに調整して、左右反転させていました。鏡文字と似た用語に「逆さ文字」がありますが、こちらは主に上下を反転させたものを指します。

鏡文字の使用例

歴史的にも、鏡文字を用いた著名な人物がいます。例えば、ルネッサンス期の万能人、レオナルド・ダ・ヴィンチは、彼の13,000ページに及ぶノート全てを鏡文字で記述しました。彼は生涯を通して左利きだったとされ、彼の独自の書き方は彼の思考スタイルを反映しています。

また、19世紀のイギリスの数学者であり小説家のルイス・キャロルも、普段は右利きでしたが、左利きの時期があったとも言われており、多くの郵便物が鏡文字で書かれています。さらに、ウーピー・ゴールドバーグは幼少時に鏡文字を書いていたことが知られています。

日本の東山天皇が残した「南無天満大自在天神」の御神号の中に見られる「自在天神」の部分は鏡文字で書かれており、何らかの意図があると考えられていますが、他に類例がなく詳しいことは不明です。

造字の方法

文字作成の手法としては、既存の文字にダイアクリティカルマークを追加したり、文字を回転させたり反転させたりする方法が用いられることがあります。これが一般的に用いられるのは国際音声記号で、180度回転された文字が主流です。左右反転の例としては、ɜやɘ、上下反転にはʁが使われています。特にチベット文字は、インドの舌の音を表現するために文字の左右反転が使われています。

『説文解字』では、いくつかの漢字は左右反転した形で書かれることがあります。また、『春秋左氏伝』の記述でも、特定の漢字が反転した形で表現されています。

このように、鏡文字は文化や歴史、個人の特性によってさまざまな形で見られる興味深い現象であり、人々の思考や表現の方法に幅広い影響を与えています。

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