頴川美術館

頴川美術館（えがわびじゅつかん）

兵庫県西宮市に位置し、かつては兵庫県の登録博物館として知られていました。この美術館は、実業家である4代頴川徳助氏が中心となって設立された公益財団法人によって運営されていました。

設立と目的

美術館の設立母体となる公益財団法人は1971年に設立され、美術館自体は1973年に開館しました。設立の主な目的は、重要文化財を含む貴重な美術工芸品などの文化財を収集、永く保存し、一般に公開すること、そしてこれらの文化財に関する学術的な調査研究を行うことにありました。設立の中心人物である4代頴川徳助氏は、幸福銀行の社長も務めた実業家でした。

収蔵品と活動

頴川美術館は、水墨画、長沢芦雪や池大雅といった近世の著名な画家による作品、さらには茶道具や墨蹟など、多岐にわたるジャンルの美術品・工芸品を約500点収蔵していました。これらの収蔵品は展示を通じて一般に公開され、多くの人々に鑑賞の機会を提供しました。

また、学術的な活動にも力を入れており、2009年には近隣に位置する関西学院大学との間で連携協力協定を結びました。この協定に基づき、美術館の収蔵品は研究資料として大学側に提供されたほか、大学の学生を対象とした博物館実習の受け入れや、芸術分野に関する学外講座の実施など、教育・研究面での連携を積極的に行っていました。

主な収蔵品には、国の重要文化財に指定されている貴重な作品が含まれていました。

重要文化財
赤楽茶碗 銘無一物（長次郎作）
絹本著色阿弥陀曼荼羅図
紙本著色山王霊験記 1巻
* 紙本墨画三保松原図（伝能阿弥筆）

その他にも、重要美術品である長沢芦雪筆の月夜山水図や、賢江祥啓筆・称意東永賛の鍾馗抜鬼眼図などが収蔵されていました。

閉館とその後の経緯

残念ながら、運営財団は経営上の困難に直面しました。これにより、2019年3月をもって財団は解散するに至りました。財団が所有していた美術館の所蔵品および土地建物は、兵庫県に譲渡されることとなりました。

その後、建物については耐震補強などの工事を実施した上で、「兵庫県立美術館西宮頴川分館」としてリニューアル開館する予定であると報じられました。所蔵品が兵庫県に引き継がれたことを記念し、2021年には兵庫県立美術館において、頴川コレクションの受贈記念展が開催されています。

一方、建物の一部は「頴川グリーンホール」として改修され、2021年から多目的スペースとしての運用が開始されました。しかし、美術館としての機能を十分に果たすことが難しいとの判断から、最終的に美術館としては2023年3月に閉館となりました。

所在地とアクセス

かつての所在地は兵庫県西宮市上甲東園1丁目10-40でした。交通アクセスとしては、阪急今津線の甲東園駅から徒歩約3分と、非常に便利な立地でした。

頴川美術館は短い活動期間ではありましたが、貴重な文化財の保存と公開、そして地域における文化・教育活動に貢献しました。そのコレクションは現在、兵庫県立美術館に引き継がれ、今後も公開される機会が期待されています。

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