高松塚古墳

高松塚古墳の概要

高松塚古墳（たかまつづかこふん）は奈良県明日香村に位置する古墳で、藤原京期の694年から710年にかけて築造された終末期古墳です。この古墳は、直径23メートル（下段）と18メートル（上段）、高さ5メートルの二段式の円墳であり、1972年に彩色豊かな壁画が発見され、考古学界で大きな注目を浴びました。墳丘は2009年に当時の姿を模して整備され、一般公開されています。壁画が描かれた石室は、2007年に修理施設に移された後、2020年に保存修理が完了し、今後は新たに設けられる管理施設で保護される計画です。

発掘調査の経緯

高松塚古墳の発掘調査は1972年に始まり、そのきっかけは地元の住民がショウガを貯蔵するために掘った穴から出てきた切石に端を発します。明日香村が資金を提供し、奈良県立橿原考古学研究所が発掘を実施しました。このプロジェクトは、村の設立15周年の記念事業の一環として進められました。発掘は考古学者や大学の研究者によって行われ、調査の過程で石室が発見され、鮮やかな壁画が登場しました。その結果、古墳は1973年に特別史跡に、壁画は1974年に国宝に指定されました。

当初、古墳は鎌倉時代に盗掘された痕跡がありましたが、壁画は幸いにも鮮やかに保存されていました。壁画の発見は考古学において画期的な出来事とされ、文化庁は迅速に保存対策と調査を開始しました。さらに、高松塚古墳に関する多くの学術調査が行われ、その結果、古墳の埋葬施設は「横口式石槨」と呼ばれるものと分類されました。年代については、出土物から推定され、最終的に藤原京期である694年から710年と確定しました。

被葬者の特定

被葬者については諸説あり、特定には至っていません。飛鳥地域の古墳では被葬者が明らかとなることが稀であり、研究者の間では「天武天皇の皇子説」、「臣下説」、「朝鮮半島系王族説」の3つのグループに分かれています。天武天皇に関連する説には、忍壁皇子や高市皇子、弓削皇子などが挙げられ、根拠としては出土した人骨の推定年齢や副葬品が用いられます。しかし、出土した骨からは40代から60代の初老と推測され、若いとされる弓削皇子の可能性は低いとされています。一方、石上麻呂などの臣下説や百済王の王族説もあり、見解は多様です。

壁画の詳細と保存

石室内の壁画は、精緻な絵画技法で描かれており、東壁、西壁、北壁および天井に広がっています。壁画には人物像、日、月、四神、星座などが描かれ、特に「飛鳥美人」と称される鮮やかな女子像が著名です。壁画の環境は非常に高湿度のため、保存が難しく、1976年から数年間にわたって保存対策が講じられました。その後も壁画はカビや雨水の影響で劣化が進行し、様々な保存策が求められてきました。

壁画の保存作業は、石室を解体しての移動修復が行なわれ、2020年には修復作業が終了しました。この一連の過程で、古墳全体が高温多湿の条件下で保護される対策が取られ、将来にわたって遮蔽された環境の維持が図られる計画となっています。高松塚古墳は、文化財としてのみならず、歴史的な意義を持つ遺構として、これからもその価値は保たれていくでしょう。

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