石上麻呂
石上麻呂（いそのかみ の まろ）は、飛鳥時代から奈良時代にかけて活躍した公卿です。別名として麿とも記されます。物部連を姓とし、後に物部朝臣、さらに石上朝臣へと改姓しました。最終的な官位は正二位・左大臣、死後には従一位が追贈されています。
石上麻呂は、壬申の乱において大友皇子（弘文天皇）側につき、皇子が自害するまで忠実に仕えました。乱後、一旦は敗者となりましたが、その忠誠心を認められ、天武天皇に赦免されます。その後、遣新羅大使として外交の任にあたり、法官として司法にも携わりました。さらに、筑紫総領として地方行政にも手腕を発揮しました。
政治の中枢では、701年に大納言に就任して以降、右大臣、左大臣へと昇進。717年に亡くなるまでの数年間は、太政官の最高位者として朝政を支えました。その功績は非常に大きく、彼の死は多くの人々に惜しまれました。
また、石上麻呂は『竹取物語』に登場する求婚者の一人「石上まろたり」のモデルとされる説や、『万葉集』において「日本」を詠んだ最初の歌人であるという説も存在します。
石上麻呂が歴史に登場するのは、壬申の乱の終盤です。大友皇子に従い、敗北後も皇子が自害するまで付き従いました。この時の行動から、彼の忠誠心の高さがうかがえます。
その後、天武天皇5年（676年）には、新羅への大使として派遣されました。この時期、日本と新羅の間では頻繁な使節の往来が行われており、彼はその重要な役割を担いました。翌年には帰国し、その外交手腕が評価されたものと思われます。
敗者側であったにもかかわらず、石上麻呂が天武天皇に起用された理由としては、彼の忠誠心が評価されたことが挙げられます。また、同族である朴井雄君が大海人皇子側で功績を挙げたことも、物部一族への処分が軽微で済んだ要因の一つと考えられています。
天武天皇13年（684年）には、物部連から朝臣の姓を与えられ、氏を石上と改めました。朱鳥元年（686年）には、天武天皇の葬儀で法官として誄を述べたことから、それ以前に法官の職務に就いていたことが分かります。
持統天皇の時代には、筑紫への派遣や天皇の即位儀式で大盾を立てる役目を担いました。文武天皇の時代には筑紫総領に任命され、地方行政のトップとして活躍しました。
大宝元年（701年）には、大宝令に基づき正三位・大納言に進み、政治の中枢で重要な役割を担うようになりました。
慶雲元年（704年）には、従二位・大納言から右大臣に任命され、2170戸を与えられました。当時、太政官では刑部親王がトップでしたが、石上麻呂は皇族以外で最高位に位置づけられました。その後、知太政官事は穂積親王に交代しましたが、彼の権威は揺るぎませんでした。
和銅元年（708年）には、藤原不比等と共に正二位に叙せられ、3月には左大臣に昇進しました。この頃、政治の実権は藤原不比等が握っていたとされていますが、石上麻呂も重要な立場を担っていたことに変わりはありません。
平城京遷都の際には、旧都の留守を任され、都の移転を円滑に進めました。霊亀元年（715年）に穂積親王が亡くなると、石上麻呂は臣下としての最高位に立ちました。
養老元年（717年）に78歳で亡くなると、その死を悼んだ元正天皇は朝政を中断し、彼に正一位を追贈しました。当時の人々は彼の死を非常に惜しみ、『続日本紀』には「追慕し痛惜しない百姓はいなかった」と記されています。没後には、多大な財物が贈られました。
舒明天皇12年（640年）：誕生。
天武天皇元年（672年）：壬申の乱で敗者側となる。
天武天皇5年（676年）10月10日：遣新羅使として新羅へ派遣。
天武天皇6年（677年）2月1日：帰国。
天武天皇13年（684年）11月1日：朝臣の姓を与えられ、氏を石上と改める。
朱鳥元年（686年）9月28日：天武天皇の葬儀で法官のことを誄す。
持統天皇3年（689年）9月10日：筑紫に位記を届ける。
持統天皇4年（690年）1月1日：持統天皇即位に際して大盾を立てる。
持統天皇6年（692年）3月6日：天皇の伊勢国への行幸に随行する。
文武天皇4年（700年）10月15日：筑紫総領になる。
大宝元年（701年）3月21日：正三位大納言。
大宝2年（702年）8月16日：大宰帥になる。
大宝3年（703年）閏4月1日：阿倍御主人を弔問。
慶雲元年（704年）1月7日：右大臣に任命。
和銅元年（708年）1月11日：正二位に進み、左大臣に任官。
和銅3年（710年）3月10日：平城京遷都。旧都の留守を務める。
霊亀3年（717年）3月3日：薨去。従一位を贈られる。
父：不詳
母：不詳
子女：石上乙麻呂、石上豊庭、石上東人、石上国盛（藤原宇合正室）
小説：『闇の左大臣 石上朝臣麻呂』（2003年、黒岩重吾、集英社）
大塚泰二郎「左大臣物部麻呂と壬申の乱」
近江昌司「石上左大臣家をめぐって」
木本好信「石上麻呂と藤原不比等」
生涯
石上麻呂は、壬申の乱において大友皇子（弘文天皇）側につき、皇子が自害するまで忠実に仕えました。乱後、一旦は敗者となりましたが、その忠誠心を認められ、天武天皇に赦免されます。その後、遣新羅大使として外交の任にあたり、法官として司法にも携わりました。さらに、筑紫総領として地方行政にも手腕を発揮しました。
政治の中枢では、701年に大納言に就任して以降、右大臣、左大臣へと昇進。717年に亡くなるまでの数年間は、太政官の最高位者として朝政を支えました。その功績は非常に大きく、彼の死は多くの人々に惜しまれました。
また、石上麻呂は『竹取物語』に登場する求婚者の一人「石上まろたり」のモデルとされる説や、『万葉集』において「日本」を詠んだ最初の歌人であるという説も存在します。
天武・持統朝から文武朝前半まで
石上麻呂が歴史に登場するのは、壬申の乱の終盤です。大友皇子に従い、敗北後も皇子が自害するまで付き従いました。この時の行動から、彼の忠誠心の高さがうかがえます。
その後、天武天皇5年（676年）には、新羅への大使として派遣されました。この時期、日本と新羅の間では頻繁な使節の往来が行われており、彼はその重要な役割を担いました。翌年には帰国し、その外交手腕が評価されたものと思われます。
敗者側であったにもかかわらず、石上麻呂が天武天皇に起用された理由としては、彼の忠誠心が評価されたことが挙げられます。また、同族である朴井雄君が大海人皇子側で功績を挙げたことも、物部一族への処分が軽微で済んだ要因の一つと考えられています。
天武天皇13年（684年）には、物部連から朝臣の姓を与えられ、氏を石上と改めました。朱鳥元年（686年）には、天武天皇の葬儀で法官として誄を述べたことから、それ以前に法官の職務に就いていたことが分かります。
持統天皇の時代には、筑紫への派遣や天皇の即位儀式で大盾を立てる役目を担いました。文武天皇の時代には筑紫総領に任命され、地方行政のトップとして活躍しました。
大宝元年（701年）には、大宝令に基づき正三位・大納言に進み、政治の中枢で重要な役割を担うようになりました。
右大臣・左大臣
慶雲元年（704年）には、従二位・大納言から右大臣に任命され、2170戸を与えられました。当時、太政官では刑部親王がトップでしたが、石上麻呂は皇族以外で最高位に位置づけられました。その後、知太政官事は穂積親王に交代しましたが、彼の権威は揺るぎませんでした。
和銅元年（708年）には、藤原不比等と共に正二位に叙せられ、3月には左大臣に昇進しました。この頃、政治の実権は藤原不比等が握っていたとされていますが、石上麻呂も重要な立場を担っていたことに変わりはありません。
平城京遷都の際には、旧都の留守を任され、都の移転を円滑に進めました。霊亀元年（715年）に穂積親王が亡くなると、石上麻呂は臣下としての最高位に立ちました。
養老元年（717年）に78歳で亡くなると、その死を悼んだ元正天皇は朝政を中断し、彼に正一位を追贈しました。当時の人々は彼の死を非常に惜しみ、『続日本紀』には「追慕し痛惜しない百姓はいなかった」と記されています。没後には、多大な財物が贈られました。
年譜
舒明天皇12年（640年）：誕生。
天武天皇元年（672年）：壬申の乱で敗者側となる。
天武天皇5年（676年）10月10日：遣新羅使として新羅へ派遣。
天武天皇6年（677年）2月1日：帰国。
天武天皇13年（684年）11月1日：朝臣の姓を与えられ、氏を石上と改める。
朱鳥元年（686年）9月28日：天武天皇の葬儀で法官のことを誄す。
持統天皇3年（689年）9月10日：筑紫に位記を届ける。
持統天皇4年（690年）1月1日：持統天皇即位に際して大盾を立てる。
持統天皇6年（692年）3月6日：天皇の伊勢国への行幸に随行する。
文武天皇4年（700年）10月15日：筑紫総領になる。
大宝元年（701年）3月21日：正三位大納言。
大宝2年（702年）8月16日：大宰帥になる。
大宝3年（703年）閏4月1日：阿倍御主人を弔問。
慶雲元年（704年）1月7日：右大臣に任命。
和銅元年（708年）1月11日：正二位に進み、左大臣に任官。
和銅3年（710年）3月10日：平城京遷都。旧都の留守を務める。
霊亀3年（717年）3月3日：薨去。従一位を贈られる。
系譜
父：不詳
母：不詳
子女：石上乙麻呂、石上豊庭、石上東人、石上国盛（藤原宇合正室）
石上麻呂を扱った関連作品
小説：『闇の左大臣 石上朝臣麻呂』（2003年、黒岩重吾、集英社）
参考文献
大塚泰二郎「左大臣物部麻呂と壬申の乱」
近江昌司「石上左大臣家をめぐって」
木本好信「石上麻呂と藤原不比等」
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