あなご飯

あなご飯（あなごめし）

あなご飯は、広島県宮島口が発祥の地とされる郷土料理です。牡蠣と並び「宮島2大グルメ」と称されることもあり、厳島（宮島）を代表するご当地グルメとして知られています。

歴史

安芸の宮島周辺海域は穴子の好漁場であり、古くから穴子が食されてきました。特に宮島周辺は潮流が速く、そこで育つ穴子は風味、柔らかさ、脂の乗りが良いとされ、「瀬戸のアナゴ」として珍重されてきました。江戸時代に編纂された地誌『芸藩通志』にも、穴子が美味であるという記述が残っています。

あなご飯の起源は明治時代に遡ります。宮島でお米の商いをしていた上野他人吉が、宮島口の駅前参道に茶店を開業し、地元の漁師が食べていた「あなごどんぶり」をヒントに、穴子のあらで炊き込んだ醤油味の飯を考案しました。これが「コクがある」と評判を呼びました。

1897年（明治30年）に山陽鉄道宮嶋駅（現・宮島口駅）が開通すると、他人吉は駅弁の販売を思い立ち、醤油味の飯に穴子を敷き詰めた「あなごめし」を1901年（明治34年）に宮島口駅で発売しました。これが、あなご飯の始まりです。

その後、あなご飯は山陽本線で評判となり、昭和30年代には観光バスが宮島口に多数訪れるようになり、「バス弁」としても有名になりました。NHKがバスにあなご飯が積み込まれる様子を取材し放送した翌年には、宮島を中心に他店でもあなご飯が販売されるようになり、広島名物として広く知られるようになりました。

現在では宮島名物として、宮島参拝客の食事や土産物として全国的に親しまれています。2017年現在、あなご飯を提供する店は宮島口に4軒、宮島に12軒あり、それぞれ独自の味を提供しています。穴子は延縄漁や筒漁などで漁獲されます。

元祖「あなごめしうえの」は、駅弁の種類を増やさず、「穴子飯」弁当一本で商売を行っていることで知られています。1901年の発売時からその姿を変えていないとされ、かつては地元で一本釣りされた穴子だけを漁師から直接買い付けていました。同店の「あなごめし弁当」は、駅弁日本一に輝いたこともあり、各地の駅弁大会では目玉企画として扱われています。「あなごめし弁当」は、宮島口駅の他、広島駅、三原駅、岡山駅、高松駅、今治駅、姫路駅でも販売された実績があります。姫路駅では、明治21年創業の「まねき[[食品]]」も昭和の頃から駅弁「あなごめし」を販売しています。

栄養価

穴子にはビタミンAが豊富に含まれており、夏バテ防止や疲れ目などに効果が期待できます。見た目はウナギに似ていますが、味は比較的さっぱりしています。

食べ方

穴子の旬は1月中旬と夏で、特に1月中旬のものが最高とされています。瀬戸内海で獲れた穴子を蒲焼き（地域によっては煮穴子）にし、「うな丼」のように盛り付けて食べるのが一般的です。

作り方

1. 穴子をウナギと同様に背開きにし、中骨、頭、尾、ひれを取り除きます。
2. 金串に刺して白焼きにした後、砂糖、醤油、みりん、日本酒を煮詰めた甘辛いたれを塗り、照りが出るまで焼きます（煮穴子や炙りとして提供する店もあります）。
3. 焼いている間、何度もたれを塗り、3cm程度に切り分けます。
4. たれを少し加えて炊き上げたご飯を丼によそい、焼き上げた穴子を載せれば完成です。ご飯に穴子を混ぜ込む作り方もあります。
5. 生姜の甘酢漬けを添えることもあります。

あなご飯は、その土地の恵みと人々の知恵が詰まった、まさに宮島を代表する味と言えるでしょう。

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