あの娘におせっかい

あの娘におせっかい（Listen to What the Man Said）

「あの娘におせっかい」は、イギリスのバンド、ウイングスが1975年にリリースしたシングルおよびそのA面に収められた楽曲です。この曲は、バンドにとって通算4作目にあたるスタジオアルバム『ヴィーナス・アンド・マース』に収録され、その後の主要なベストアルバムにも繰り返し選曲されています。

楽曲の誕生と制作背景

この楽曲の制作は、1975年初頭、ウイングスがニューオリンズで新しいアルバムのためのレコーディングセッションを開始した際に始まりました。しかし、制作は順調に進んだわけではありません。セッションの途中で、当時のドラマーであるジェフ・ブリトンが突如バンドを脱退するというアクシデントが発生します。急遽、バンドは新聞広告を通じて後任のドラマーを募集し、応募してきたジョー・イングリッシュを新たに迎え入れてレコーディングを続行しました。

「あの娘におせっかい」の録音は、1月31日と2月20日に試みられましたが、ポール・マッカートニーは当初、その仕上がりに満足していませんでした。思い描くサウンドを実現するため、彼は3月に入ってからロサンゼルスで追加の作業を行います。特に、ゲストギタリストとしてデイヴ・メイソンを招き、ギターパートのオーバーダビングを施すなど、様々な試行錯誤が重ねられました。

それでもなお納得がいかなかったポールは、楽曲にサクソフォンのサウンドを取り入れることを思いつきます。すぐにスタジオに来られる著名なミュージシャンとして白羽の矢が立ったのが、サクソフォン奏者のトム・スコットでした。トム・スコットはスタジオで試奏を行った後、数テイクの録音に臨みましたが、なかなかポールが求めるテイクは生まれませんでした。ところが、皮肉にも、最初に「試しに吹いてみた」という形で偶然録音されていた試奏時のテイクが、最終的に最も理想に近い演奏として採用されることになったのです。

リリースと商業的な成功

困難な制作過程を経て完成した「あの娘におせっかい」は、新生ウイングスとして初のアルバムとなる『ヴィーナス・アンド・マース』からの先行シングルとして、1975年5月16日に世に送り出されました。このシングルは特に北米市場で大きな成功を収めます。

アメリカでは、ビルボード誌の週間シングルチャートで1975年7月19日付で見事第1位を獲得。その年の年間チャートでも第36位にランクインしました。キャッシュボックス誌のチャートでも6月12日付で首位に立ち、年間チャートでは第45位を記録しています。日本でも、この曲はオリコンチャートで1位を獲得するヒットとなりました。一方、ウイングスの母国であるイギリスでは、シングルチャートで最高位6位にとどまりました。

各バージョンの特徴

この楽曲には、シングルバージョンとアルバムバージョン、そしてライブバージョンでいくつかの違いが見られます。アルバム『ヴィーナス・アンド・マース』に収録されたバージョンでは、曲の冒頭にアメリカのファンクバンド、ミーターズのギタリストであるレオ・ノセンテッリの喋りを模倣したポールの声が入っていますが、シングルバージョンではこのパートはカットされています。

また、アルバムではこの曲が次のトラックである「トリート・ハー・ジェントリー〜ロンリー・オールド・ピープル」へと繋がるメドレー形式になっていますが、シングルバージョンでは独立した楽曲としてフェイドアウトして終了します。ライブでは、公式ライブアルバム『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』やライブ映画『Rock Show』に収録されており、これらのライブ演奏は原曲よりもややアップテンポなアレンジで披露されています。

B面曲と参加ミュージシャン

シングルのB面には「歌に愛をこめて」が収録されています。この曲は「あの娘におせっかい」よりも前に、1974年11月にロンドンのEMIレコーディング・スタジオで行われた、『ヴィーナス・アンド・マース』制作のための初期セッションで録音されました。

この楽曲には、ウイングスの当時のメンバーに加え、複数のゲストミュージシャンが参加しています。

ウイングス主要メンバー:
ポール・マッカートニー: リード＆バッキング・ボーカル、ベースギター、アコースティック/エレクトリックギター、クラビネット、エレクトロニックピアノ、モーグ・シンセサイザー、ハンドベル
リンダ・マッカートニー: バッキング・ボーカル、ハンドベル、モーグ・シンセサイザー
デニー・レイン: バッキング・ボーカル、エレクトリック・ギター、ボンゴ、ピアノ
ジミー・マカロック: エレクトリック・ギター、12弦ギター
ジョー・イングリッシュ: ドラムス、パーカッション（ただし、「歌に愛をこめて」の一部ドラムはジェフ・ブリトン）
ジェフ・ブリトン: ドラムス、ミルクボトル（B面曲に参加）

ゲストミュージシャン:
シド・シャープ・ストリングス: チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリン、コントラバス（ストリングス演奏）
ゲイル・レヴァント: ハープ
デイヴ・メイソン: エレクトリック・ギター（オーバーダビング）
トム・スコット: サクソフォン
* トニー・ドーシー: ストリングス・アレンジメント

「あの娘におせっかい」は、メンバーチェンジや度重なる録音を経て完成し、世界的なヒットを記録した、ウイングスというバンドの生命力とポールの音楽への情熱を示す一曲と言えるでしょう。

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