うなぎ書房

うなぎ書房：落語愛に満ちた出版社の軌跡

概要

うなぎ書房は、平成時代に東京都世田谷区代田に存在した出版社です。特に落語分野の書籍に力を入れており、多くの落語家や演芸に関する書籍を出版しました。社名は、細長い建物を指す「うなぎの寝床」に由来し、創業者である稲見茂久氏は「うなぎのぼりを当て込んで」名付けたと語っています。設立当初から社名を間違えられ、米のセールスや出前の注文が来るという逸話も残っています。

沿革

1998年、立風書房の編集者であった稲見茂久氏によって設立されました。稲見氏は大学卒業後、学研に入社し、系列の立風書房に出向。『続 米朝上方落語選』など、演芸書籍の編集に携わった経験を持ちます。1998年10月29日には、出版を応援する有志によって、アルカディア市ヶ谷（私学会館）で壮行会「囲む会」が開催されました。

2005年には、稲見氏が「寄席文化に著しく貢献した」として、第10回林家彦六賞特別賞を受賞。長年の落語文化への貢献が認められました。しかし、2017年に登記簿が閉鎖され、その活動に幕を閉じました。

出版物

うなぎ書房は、数多くの落語関連書籍を出版しました。以下に主な出版物を挙げます。

『落語家柳昇の寄席は毎日休みなし』（春風亭柳昇、1999年7月）
『老いの居場所 - 時には死んだふり』（式田和子、1999年7月）
『志ん生の忘れ物』（小島貞二、1999年12月）
『師匠の懐中時計』（林家正雀、2000年3月）
『父ちゃんは二代目紙切り正楽』（桂小南治（文）、林家二楽（絵）2000年4月）
『相手を不幸にしない会話 - ユーモア・ショートショート40』（村瀬継弥、2000年10月）
『落語家米丸 笑いの引き出し』（桂米丸、2000年12月）
『背中の志ん生 - 落語家圓菊』（古今亭円菊、2001年5月）
『ペンギン日和 - 銀の輔町を行く』（高野ひろし、2001年8月）
『十代文治 噺家のかたち』（桂文治（10代）（著）、太田博（編）、2001年12月）
『歳のとりかた』（式田和子（著）式田恭子（編）、2002年4月）
『ヨイショ志ん駒一代 - 志ん生最後の弟子』（古今亭志ん駒、2002年10月）
『寄席おもしろ帖』（長井好弘（文）・林家正楽（紙切り）、2003年4月）
『こんな落語家がいた - 戦中・戦後の演芸視』（小島貞二、2003年8月）
『師匠の懐中時計（増補）』（林家正雀、2003年9月）
『志ん生を撮った！ - 元祖寄席カメラマン秘話』（金子桂三、2004年3月）
『バカの中身 - 木久蔵一代』（林家木久蔵（初代）、2004年6月）
『寄席おもしろ帖 第2集（おかわりッ）』（長井好弘、2004年11月）
『最後の噺家 こだわり文治の泣きどころ』（中島英雄、2005年2月）
『落語見取り図 - 笑いの誕生・職人ばなし』（関厚生、2005年7月）
『不死身の落語家（はなしか）』（春風亭柳桜、2005年12月）
『極上歌丸ばなし』（桂歌丸(著）山本進（編）、2006年6月）
『ぜいたくな落語家（はなしか）- 六代目小さん』（柳家小さん（6代目）（著）、大野善弘（編)、2006年9月）
『噺家渡世 - 扇橋百景』（入船亭扇橋（著）、長井好弘（編）、2007年7月）
『談志狂時代 - 落語家談幸七番勝負』（立川談幸、2008年2月）
『落語家柳昇の寄席は毎日休みなし(新装改訂版）』（春風亭柳昇、2008年7月）
『談志狂時代 <2>』（立川談幸、2009年1月）
『月ば撃つぞ！ - 落語家歌之介がゆく』（三遊亭歌之介、2009年7月）
『落語家の値打ち』（金原亭馬生（11代目）、2010年10月）
『おやっさん - 師匠松鶴と私』（笑福亭松喬（6代目）、2011年7月）
『彦六覚え帖 - 稲荷町の師匠没後三〇年』（林家正雀、2012年7月）
『談志の忘れもの - 落語立川流噺』（立川談幸、2012年11月）

これらの書籍は、落語ファンにとっては貴重な資料であり、落語文化を深く理解する上で欠かせないものとなっています。

所在地

うなぎ書房の所在地は、東京都世田谷区代田三丁目21-20でした。創業当初は、事務所は東京都港区にありました。

まとめ

うなぎ書房は、落語への深い愛情と情熱によって、数々の貴重な書籍を世に送り出した出版社でした。その活動は、落語文化の発展に大きく貢献し、多くの人々に愛されています。

もう一度検索