けんびきょう座AU星c

けんびきょう座AU星c

けんびきょう座AU星cは、地球から見てけんびきょう座の方向に約9.79パーセク（およそ32光年）離れた位置にある恒星、けんびきょう座AU星の周囲を公転する太陽系外惑星の一つです。主星であるけんびきょう座AU星は、年齢がおよそ2200万年という非常に若い前主系列星に分類されます。

発見の経緯

この惑星系には、すでに公転周期がおよそ8.5日という、より主星に近い軌道を回る惑星、けんびきょう座AU星bが2020年6月に発見されていました。けんびきょう座AU星cは、その惑星bの外側にあたる、公転周期が約18.9日の軌道を周回しています。惑星cの存在は、恒星の手前を通過する際に星の光を周期的に遮る「トランジット」と呼ばれる現象を利用した観測によって、2020年12月に確認されました。実は、アメリカ航空宇宙局（NASA）のトランジット系外惑星探索衛星TESSによるそれ以前の観測データからも、惑星bとは異なる、未知の別の惑星によるものと考えられるトランジットの兆候が捉えられていました。

特性

けんびきょう座AU星cは、その大きさにおいて特徴を持っています。半径は地球のおよそ3.51倍にも達しており、これは太陽系における海王星や天王星に近いサイズ感です。そのため、分類としては主にガスで構成される「海王星型惑星」に区分されています。この惑星cと、先に発見された惑星bは、興味深い軌道関係にあります。両惑星の公転周期の比がおよそ9:4という特定の関係（平均運動共鳴と呼ばれます）にあることが判明しています。この軌道共鳴は、系が比較的安定した状態であることを示唆していますが、惑星同士の重力的な相互作用によって公転周期にごくわずかな変動（TTV; Transit Timing Variation）が生じる可能性も指摘されています。

研究上の重要性

けんびきょう座AU星系全体は、天文学の研究において非常に重要な位置づけにあります。特に、主星が年齢が2200万年という非常に若い段階にあることから、この系に属する惑星たちは、惑星が形成されて間もない初期段階の大気構成や、惑星が生まれた環境である原始惑星系円盤の進化過程などを探る上で、非常に貴重な手がかりを与えてくれるシステムとして注目されています。若い惑星系における惑星の大気がどのように進化するのか、あるいは原始惑星系円盤がどのように散逸していくのかといった、惑星系の初期進化に関する様々な謎を解明するための重要な観測対象として、今後のさらなる詳細な調査が期待されています。

関連項目

太陽系外惑星
2020年に発見された太陽系外惑星の一覧

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