こころの虹

ジャッキー吉川とブルー・コメッツが1968年1月25日にシングルとして発表した「こころの虹」（こころのにじ）は、グループのキャリアにおいて重要な位置を占める楽曲です。

この曲は、詞を橋本淳氏が、曲と編曲を井上忠夫氏が手がけました。楽曲の特徴としては、当時人気を博していた黒沢明とロス・プリモスの「ラブユー東京」に代表されるような、哀愁を帯びたメロディと情緒豊かな歌唱が際立つムード歌謡の要素を色濃く取り入れている点が挙げられます。グループサウンズの枠にとらわれず、多様な音楽スタイルに挑戦した彼らの姿勢がうかがえる作品と言えるでしょう。

このシングルがリリースされたのは、ジャッキー吉川とブルー・コメッツが日本の音楽シーンの中心に躍り出た直後のことでした。前年の1967年12月には、彼らの最も有名なヒット曲である「ブルー・シャトウ」が、その年の音楽界で最も権威ある賞の一つである第9回日本レコード大賞を受賞していました。この受賞は、単に一曲のヒットにとどまらず、ジャッキー吉川とブルー・コメッツを国民的な存在へと押し上げる決定的な出来事でした。テレビやラジオでの露出も増え、彼らの一挙手一投足が注目されるようになったまさにそのタイミングで、「こころの虹」は発売されました。このような背景があったからこそ、この曲は「ブルー・シャトウ」に続いて大ヒットを記録し、彼らの人気と実力を改めて証明する結果となりました。メディアやファンからの大きな期待を背負いながらも、それを上回る成功を収めたことは、当時の彼らの勢いを如実に物語っています。

また、本シングルのB面に収録された「すみれ色の涙」という楽曲も、特筆すべき存在です。「すみれ色の涙」は、このシングルの発売に先立つ1967年10月25日にリリースされた、彼らのアルバム『ジャッキー吉川とブルー・コメッツ オリジナル・ヒット第2集』に収録されていた「すみれ色の瞳」に対するアンサーソングとして位置づけられています。「すみれ色の瞳」は片桐和子氏が作詞、小田啓義氏が作曲・編曲を担当しました。「すみれ色の涙」は、発表から年月を経た後、日本の人気歌手である岩崎宏美氏によってカバーされたことで、さらに広い層に知られることとなりました。岩崎氏が1981年にシングルとしてリリースしたこのカバーバージョンは、当時大ヒットを記録し、多くの音楽チャートで上位にランクインするなど、大きな商業的成功を収めました。さらに、この岩崎宏美氏による「すみれ色の涙」の歌唱は高く評価され、第23回日本レコード大賞において最優秀歌唱賞という栄誉ある賞を受賞しています。オリジナルが持つ楽曲の良さが、岩崎氏の情感豊かな歌声によって新たな魅力を引き出され、時代を超えて多くの人々に愛される名曲となったのです。

「こころの虹」とそのB面曲「すみれ色の涙」は、ジャッキー吉川とブルー・コメッツがただのグループサウンズバンドではなく、日本のポピュラー音楽の幅広いジャンルで活躍できた実力派グループであったことを示す証左とも言えます。彼らが残した楽曲は、その後の音楽シーンにも影響を与え、特に「すみれ色の涙」のように、カバーを通じて新たな世代に受け継がれていくことで、その生命力を保ち続けています。「こころの虹」は、1968年の音楽史における重要な一ページを飾る作品であり、ジャッキー吉川とブルー・コメッツの輝かしいキャリアを語る上で欠かせない一曲として、今も多くの音楽ファンに親しまれています。

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