こんな男でよかったら

『こんな男でよかったら』（1973年放送）は、渥美清主演による心温まる人情喜劇です。全26話で、毎週月曜22時からの放送枠で、読売テレビ制作、日本テレビ系列で放映されました。

物語の舞台は、岐阜県郡上八幡というのどかな城下町。主人公は、余七五郎という天涯孤独の中年男性です。彼は自称作詞家として、ある日突然この町に現れます。七五郎は、忘れ去られた故郷と、幻の母を探し求めて来たのです。その幻の母は、町にある割烹料亭「福の家」の女将、お福だと彼は信じています。

七五郎は、マキシコートにハイヒール、チリチリ頭で縁無し眼鏡という、独特な風貌をしています。性格は極めて図々しく、感情移入型のO型。東京育ちで、実は静岡県伊東で「殴られ屋」を本業にしていた過去も持っています。さらに、物語が進むにつれ、彼を取り巻く様々な謎が明らかになっていきます。「本物の七五郎の遺骨と位牌」の存在、本当に死んでいたのではないかという疑惑など、予想外の展開が待ち受けています。

町の人々との交流を通して、七五郎は様々な騒動を引き起こします。しかし、その騒動を通して、町の人々は七五郎の真実に触れ、彼の人間味に触れていきます。彼の破天荒な振る舞いにも関わらず、彼を温かく受け入れる人々の姿が描かれ、物語全体に温かい雰囲気が漂っています。

主要キャストには、栗原小巻、ミヤコ蝶々、島田陽子、清水はるひ、倍賞美津子、春川ますみ、小坂一也、浜村純、下條アトム、阿部進、財津一郎、渡辺篤史、小峰千代子、津坂匡章、木田三千雄、田中春男、ひし美ゆり子、木村俊恵、榎本ちえ子、小林由枝、小塙謙士、山田桂子、中村玉緒など、豪華な顔ぶれが揃っています。柳生博、村田正雄、宮浩之、水谷祐子、有馬貴子、頭師佳孝、木村功、大塚道子、川崎公明、瀬川菊之丞、田村亮、天地総子といったゲスト俳優も物語に彩りを添えています。

このドラマは、山田洋次も企画に関わっており、渥美清と山田洋次の『男はつらいよ』シリーズのコンビが再結集した作品としても注目を集めました。「ハイカラな寅さん」を目指したというコンセプトのもと制作された本作は、渥美清の新たな魅力を引き出した作品と言えるでしょう。

音楽は、フォークシンガーの高石ともやが担当。劇伴音楽だけでなく、自らバンジョーを弾きながらのナレーションも務めています。主題歌「こんな男でよかったら」も、渥美清が歌っており、作詞は早坂暁、作曲は高石ともやと木田高介が担当しました。

なお、本作は放送当時、精神障害者に対する差別用語が台詞に含まれていたことが問題視され、再放送時には抗議を受け、読売テレビが謝罪する事態となりました。

スタッフ陣も豪華で、プロデューサーに志波英樹（よみうりテレビ）、脚本に早坂暁、演出に荻野慶人といった実力者が名を連ねています。制作は国際放映とよみうりテレビが共同で行いました。放送局は読売テレビと日本テレビ系列ですが、当時のローカルセールス枠のため、同時ネットは5局のみで、それ以外の系列局では時差ネット、またはネットされなかった局もあったようです。

『こんな男でよかったら』は、渥美清の代表作の一つであり、人情味あふれるストーリー、個性豊かなキャラクター、そして美しい郡上八幡の風景が織りなす、忘れがたいドラマとして、多くの視聴者の心に刻まれています。

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