ご存知遠山の金さん

ご存知遠山の金さん：時代劇の金字塔、新たな幕開け

1973年10月7日から1974年9月22日にかけて、NET（現・テレビ朝日）で放送された時代劇『ご存知遠山の金さん』。日曜8時枠を飾った本作は、全51話にわたる人気シリーズとなりました。主演を務めたのは、歌舞伎役者として活躍していた市川段四郎。前シリーズ『遠山の金さん捕物帳』で金さん役を演じていた中村梅之助の後を受け、27歳という若さで江戸北町奉行・遠山金四郎を熱演しました。

前シリーズからの変更点と、巧みな継承

本作は、陣出達朗を原作に、前シリーズから主人公以外の設定や登場人物を刷新。しかし、タイトルバックの映像や主題歌は前シリーズと同一のものを使用するなど、視聴者にとっての親しみやすさを考慮した作りとなっています。

特に目を引くのは、市川銀之助演じる弥太郎の存在でしょう。当初は抜け忍として「からす小僧」を名乗る義賊でしたが、金さんの助けによって改心し、以後、密偵として金さんに協力することになります。前シリーズの虎吉に相当する存在と言えるでしょう。

個性豊かな登場人物たち

金さんを取り巻く個性豊かな登場人物たちも、物語に彩りを添えています。桂小金治演じる樽平、田坂都演じるお照、工藤堅太郎演じる昇竜の半五郎、谷村昌彦演じる三味線堀の伝助、井上茂演じる忠太、高梨わか子演じるお町、古川ロックと多賀勝演じる鶴吉と亀三、そして楠年明演じる浅見重三郎など、それぞれのキャラクターが持ち味を発揮し、物語を盛り上げています。

中でも、浅見重三郎は前作の内藤や高崎と同じく、金さんの正体を知る数少ない人物として重要な役割を果たします。奉行所与力として、金さんと共に悪人退治に奔走する姿は、視聴者の心を掴むことでしょう。

また、レギュラーではないものの、佐藤蛾次郎演じる三休も印象的なキャラクターです。インチキ坊主として描かれる三休は、第19話と第24話でメインゲストとして登場し、物語にスパイスを加えています。

金さんの新たな魅力

市川段四郎演じる金さんは、前シリーズとは異なる魅力を見せてくれます。なめくじ長屋をねぐらとし、「樽平」に入り浸る姿は、庶民的な親しみやすさを演出。第18話では、古い友人に対して正体を悟られないよう、珍しく白洲で桜吹雪を見せなかったり、第24話ではお白州が開かれず、自ら金さんの正体を明かすなど、従来の金さん像とは異なる一面を見せています。

さらに、第42話では白洲ではない場所で悪人と対峙し、桜吹雪を見せるという珍しい演出も。これらの描写は、金さんの人間的な深みを感じさせ、視聴者の共感を呼び起こすことでしょう。

弥太郎の活躍と物語の終焉

弥太郎は金さんの密偵として活躍する一方、第18話ではお町と同業の瓦版屋に転業。軽業師の出であることから身軽さを活かし、事件解決に貢献します。しかし、第45話を最後に画面から姿を消します。劇中での説明はありませんでしたが、視聴者には様々な憶測を呼び起こす、印象的な退場となりました。

時代劇の枠を超えた魅力

『ご存知遠山の金さん』は、単なる時代劇にとどまらず、登場人物たちの個性、ドラマチックな展開、そして時代劇特有の粋な演出が見事に調和した作品です。51話というボリュームにも関わらず、飽きさせない工夫が凝らされており、昭和の時代劇ファンのみならず、現代の視聴者も楽しめる作品と言えるでしょう。

主題歌、スタッフ、そして制作

主題歌は、前シリーズと同様に親分&子分ズが担当。「遠山の金さん」の軽快なメロディーは、本作の印象をさらに強く焼き付けています。制作はNETと東映京都が共同で行い、数多くのスタッフが携わって完成した作品です。脚本には、小川英、四十物光男、遠藤仁などそうそうたる面々が名を連ね、音楽は小川寛興が担当。豪華な制作陣によって、完成度の高い時代劇が誕生しました。

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