さんとす丸

さんとす丸について

『さんとす丸（さんとすまる）』は、大阪商船と商船三井客船に所有されていた貨客船であり、移民輸送や軍事作戦など多岐にわたり活躍しました。特に初代『さんとす丸』は、大型ディーゼル貨客船の先駆けとして、南米移民の輸送に重要な役割を果たしました。初代の活躍の後、第二次世界大戦の影響を受けて新たに建造された二代目『さんとす丸』も、戦後の日本における移民船としての役割を担いました。

初代さんとす丸の概要

初代『さんとす丸』は、1925年に三菱長崎造船所で起工され、1926年に竣工しました。竣工後、早速に処女航海を行い、冷蔵庫に静岡県産のミカンを約50トン積載して南米への航海に出ました。その後は、神戸を出発して横浜を経由し、多くの寄港地を巡りながら南アメリカ大陸へ向かっていました。この船は南米への移民輸送だけでなく、オランダ領東インドへの要人輸送や海軍士官の研修にも利用されました。

特に1936年からは、パラグアイへの移民輸送も始まり、日系移民の拠点を築く一助となりました。しかし、世界情勢の変化により、南米航路は縮小され、連合国争雲の影響で船の運用が厳しくなりました。1941年には日本海軍に徴傭され、特設潜水母艦となり、「満珠丸」と改名されましたが、その後も旧名の『さんとす丸』として呼ばれることが多かったです。

戦時下での運用と最期

太平洋戦争中、初代『さんとす丸』は第二潜水戦隊付属の潜水母艦として活動し、1942年以降は南方作戦に展開しました。しかし、1944年には輸送任務を行っている際にアメリカの潜水艦に攻撃され沈没しました。この際、乗組員の多くが救助されることが出来ましたが、残念ながら多くの人々の命が失われました。1945年1月には除籍され、艦船としての歴史に幕を下ろしました。

二代目さんとす丸の概要

初代『さんとす丸』の後、戦後の日本は深刻な状況にあり、海運業は再建の道を模索していました。1947年から始まった計画造船の結果、二代目『さんとす丸』が誕生しました。この船は、外洋型貨客船として建造され、戦後初の移民船としての役割も果たしました。1952年のサンフランシスコ講和条約の発効を契機に、移民政策が復活し、大阪商船はこの船を用いて南米移民の輸送を再開します。

二代目『さんとす丸』は、改装を経て数回にわたり移民の輸送を行いましたが、1960年代には移民の数が減少し、船の採算が厳しくなったため、1965年に移民船としての最後の航海を終えました。1972年にはパナマの企業に売却され、その後も改名を経て、1976年に解体されました。

まとめ

さんとす丸は、初代、二代ともに日本の海運史において重要な役割を担った船です。移民輸送の歴史と共に、戦争の影響を受けつつも、時代の変遷を経て消えていったこの貨客船は、当時の移民の想いや多くの人々の人生に影響を与えました。

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