たて座デルタ星

たて座δ星について

たて座δ星（Delta Scuti、δ Sct）は、たて座に位置する恒星であり、たて座δ型変光星の代表的な存在です。この星は約202光年の距離にあり、天文学的に非常に興味深い特性を持っています。

概要

たて座δ星は、金属量がAm星に匹敵することが特徴です。可視光におけるスペクトル分類はK8で、等級は12.2等級のB型伴星と、G7型で9.2等級のC型伴星の2つを持っています。これらの伴星は、かつては見かけ上の二重星と考えられていましたが、20年以上にわたる観測を通じて、それぞれが同じ固有運動を示すため、実際には連星系を形成していると考えられています。

銀河坐標系でのたて座δ星の空間速度成分は、[U, V, W] = [-42, -17, -1] km/sであり、銀河中心の周りを公転しています。この公転には、近点22,310光年、遠点27,590光年、軌道離心率0.11が含まれます。将来的には、約115万年から133万年後に私たちの太陽系に10光年まで接近し、その際には視等級-1.84に達し、現在の最も明るい星であるシリウスを超える光を発する可能性があります。

歴史と命名

この恒星は、天文学者ジョン・フラムスティードによって記録されましたが、彼はたて座を認識していなかったため、フラムスティードの『天球図譜』ではわし座に属するものとして描かれています。この過去の誤解から、かつてたて座δ星は「わし座2番星」と呼ばれていました。

変光の特徴

たて座δ星の魅力はその変光特性にもあります。1899年から1900年にかけて、リック天文台の観測員ウィリアム・ウォレス・キャンベルとその助手ウィリアム・ハモンド・ライトによって行われた観測において、たて座δ星は分光連星であることが発表されました。しかし、1926年の再観測では、連星系に関する有意なデータが得られませんでした。

続いて、アッティリオ・コラチェビッチが1935年に行った観測により、たて座δ星の視線速度に周期的な変動があることが確認され、約4時間40分という周期で観測されました。これに続いて、グッドセル天文台のファスによって光度変化が確認され、約0.2等級の変光が観察されました。

1938年には新たに周期の発見があり、脈動モデルが提唱されました。この研究以降、たて座δ星では複数の動径振動や非動径振動が観測され、最も強い周波数は59.731μHz、次いで61.936μHzの周期として確認されています。20世紀末までに合計8つの異なる周波数の周期が観測されており、変光星としての研究が続けられています。

まとめ

たて座δ星は、恒星としての特性のみならず、その将来の運動や変光のリズムが私たちに多くの知見を与えています。今後もたて座δ星に対する研究は続き、さまざまな新たな発見が期待されます。

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