ちょうこくしつ座

ちょうこくしつ座 (Sculptor)

ちょうこくしつ座は、18世紀の半ばに考案された現代の88星座のひとつで、彫刻家のアトリエをモチーフにしています。この星座は南天に位置し、低い位置から見ることができるため、日本からはあまり目に留まりません。そのため、明るい星が少なく、あまり知られていない星座です。

主な天体

ちょうこくしつ座には、特にメシエ天体は含まれていませんが、いくつかの特徴的な銀河が存在し、アマチュア天文家にとって観測対象として人気があります。この星座の領域には銀河南極があり、銀河円盤が相対的に薄いため、遠方の銀河を観察することが容易です。

恒星

2022年4月時点で、国際天文学連合（IAU）によって認証された恒星は次の通りです。

• - HD 4208: ニカラグアに命名権が与えられ、主星はCocibolca、太陽系外惑星はXolotlanと呼ばれています。
• - α星: 明るさ4.27等の4等星で、ちょうこくしつ座で最も目立つ恒星です。変光星の一種である「おひつじ座SX型変光星」に分類されています。
• - β星: 明るさ4.37等の4等星で、ちょうこくしつ座で2番目に明るい恒星です。
• - R星: 漸近巨星分枝段階にある炭素星で、SRB型の半規則変光星です。
• - HD 4113: G型主系列星と赤色矮星、褐色矮星からなる連星系で、主星に太陽系外惑星が発見されています。
• - HD 225213: 太陽系から14.17光年の距離にある赤色矮星で、グリーゼカタログの1番に登録されています。

星団・星雲・銀河

ちょうこくしつ座にはいくつかの重要な天体があります。主なものは以下の通りです。

• - NGC 55: 天の川銀河から約640万光年の距離にある不規則銀河で、ちょうこくしつ座銀河群の中心として知られています。日本からも観測可能な銀河で、アンドロメダ銀河に次ぐ明るさです。
• - NGC 253: セイファート銀河で、ちょうこくしつ座銀河群の中心に位置している渦巻銀河です。
• - NGC 300: 天の川銀河から約630万光年の距離にある渦巻銀河で、明るさから観測対象として人気があります。
• - ちょうこくしつ座矮小銀河: 太陽系から約27万4000光年の位置にあり、確実に天の川銀河に属しています。
• - IC 5332: 約2500万光年の距離にある渦巻銀河で、ハッブル宇宙望遠鏡とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した画像があります。
• - ちょうこくしつ座銀河群: 天の川銀河が属する局所銀河群に近い銀河群で、約1270万光年先にあります。

また、2014年に観測されたほうおう座流星群の放射点も、この星座の領域に存在しているとされています。

由来と歴史

ちょうこくしつ座は、18世紀中頃にニコラ＝ルイ・ド・ラカイユによって考案されました。彼が描いた星図に、フランス語で「彫刻家のアトリエ」を意味する「l’Atelier du Sculpteur」として初めて登場しました。その後、1763年に出版された著書で、ラテン語名「Apparatus Sculptoris」に改められ、イギリスの天文学者ジョン・ハーシェルが提案した「Sculptor」として定着しました。

1922年には国際天文学連合（IAU）が88星座の定義を行い、ちょうこくしつ座もその一つとして公式に認められました。古代の星座とは異なり、神話や伝承は存在せず、純粋に科学を基にした星座となっています。

地域と呼称

日本では1910年に発行された天文学会の会誌で「彫刻室」という名称が使用され、以降「ちょうこくしつ」として定着しました。京都帝国大学の山本一清氏は、フランス語の「アトリエ」を使う提案をしています。最近の中国では「玉夫座」と呼ばれています。

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