ぬかびら温泉

ぬかびら温泉(ぬかびらおんせん)



北海道の東部に位置する河東郡上士幌町にある「ぬかびら温泉」は、雄大な大雪山国立公園内に抱かれた温泉地です。国道273号線沿い、糠平湖の南側に静かに広がっており、豊かな自然環境の中で心身を癒すことができます。

温泉の特長



ぬかびら温泉で湧出する湯は、源泉ごとに泉質が若干異なりますが、主に単純温泉、弱食塩泉、重曹泉といった種類が挙げられます。源泉温度は50℃から60℃と比較的高温です。湧き出したお湯は通常無色透明ですが、湯船によってはわずかに硫黄成分に由来する白い湯の花が確認できることもあります。

この温泉地の大きな特徴の一つは、全ての宿泊施設や日帰り入浴施設で源泉かけ流しを採用している点です。これは糠平温泉旅館組合が「源泉かけ流し宣言」として掲げている方針に基づいています。ただし、源泉が高温であるため、一部の施設では快適な湯温にするために沢水による加水を行っています。一部の施設では飲泉も可能です。温泉街の一角には、誰でも気軽に利用できる無料の足湯も設置されています。

温泉街と周辺施設



温泉街には、ホテル旅館ユースホステルなど、個性豊かな宿泊施設が9軒ほど点在しており、旅のスタイルに合わせて選ぶことができます。これら宿泊施設の多くは、宿泊客以外でも日帰り入浴を受け付けており、気軽に温泉を楽しむことが可能です。複数の施設を巡りたい方のために、お得な湯めぐり手形も販売されています。

かつて、この地には現在営業している施設よりも大規模なホテルが存在し、温泉地の賑わいを支えていました。しかし、2003年に閉鎖・倒産されて以降、長らく手つかずの状態が続き、建物の荒廃が進んで廃墟化してしまいました。その後、2014年上士幌町が建物を取得し、国へ譲渡された後、解体されました。現在、その跡地は足湯などを備えた公園として整備されています。

温泉街の文化施設としては、「ひがし大雪博物館」があり、大雪山国立公園の自然や昆虫の標本などを展示しています。また、かつて地域を結んでいた旧国鉄士幌線糠平駅跡には、「上士幌町鉄道資料館」が設けられており、当時の鉄道に関する資料に触れることができます。

周辺の観光スポット



ぬかびら温泉の周辺には、魅力的な観光スポットが数多く点在しています。冬期には「ぬかびら源泉郷スキー場」、夏には「国設ぬかびらキャンプ場」が利用できます。

中でも特筆すべきは、北海道遺産に選定された「旧国鉄士幌線廃線跡コンクリートアーチ橋梁群」です。これはかつて鉄道が走っていた際に建設されたコンクリート製の橋梁群で、現在もその遺構が糠平湖周辺に残されています。特に糠平湖に架かる「タウシュベツ川橋梁」は、水位によって姿を現したり沈んだりすることから「幻の橋」とも呼ばれ、多くの観光客や写真愛好家を惹きつけています。これらのアーチ橋を巡るツアーなども催されています。

歴史



ぬかびら温泉の歴史は、1919年大正8年)に「湯元館」初代館主が温泉を発見したことに始まります。1924年大正13年)に「湯元館」が開業し、開湯となりました。昭和初期には十勝の奥座敷として賑わい、1937年昭和12年)には鉄道が開通しましたが、1987年昭和62年)に廃線となりました。2007年(平成19年)には源泉かけ流し宣言が行われ、2009年(平成21年)には温泉地区の字名が「ぬかびら源泉郷」に変更されています。

アクセス



ぬかびら温泉への主なアクセスはバスです。帯広駅バスターミナルからは、十勝バスの路線バス(51系統)で約1時間30分です。また、旭川駅や層雲峡温泉からは、都市間バス「ノースライナーみくに号」が利用でき、それぞれ約2時間30分、約1時間10分でアクセスすることが可能です。

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