のど自慢狂時代

映画『のど自慢狂時代』について

『のど自慢狂時代』は、1949年（昭和24年）に斎藤寅次郎が監督し、東横映画が製作、大映が配給した日本の長編劇映画です。この作品は、人気ラジオ番組『のど自慢素人演芸会』（現在の『NHKのど自慢』）を題材にしたコメディであり、戦後の日本を明るく照らしました。特に、美空ひばりの映画デビュー作として知られ、彼女の幼いながらも卓越した才能が垣間見えます。

製作の背景

第二次世界大戦後、興行会社であった東横映画は大映と提携し、「大映第二撮影所」（現在の東映京都撮影所）を「東横映画撮影所」として使用し、映画製作を開始しました。本作は、同社が製作開始から3年目に手がけた現代劇であり、製作第16作にあたります。当時、ラジオ番組として人気を博していた『のど自慢素人演芸会』を映画化することで、多くの人々に娯楽を提供することを目指しました。

作品の特徴

この映画は、戦後の混乱期にあっても、人々の心に希望と笑いを届けようとした当時の映画製作者たちの熱意が感じられます。物語は、のど自慢大会を舞台に、様々な人々が繰り広げる騒動をコミカルに描いています。また、劇中では、美空ひばりの愛らしい姿と歌声が印象的で、彼女の才能を世に知らしめるきっかけとなりました。さらに、本作には、後に東映の名誉会長となる若き日の岡田茂が進行係として参加していたことも特筆すべき点です。

映倫コードについて

本作には、「映倫番号」が付与されています。これは、公開直前の1949年6月14日に「映画倫理規程管理委員会」（旧映倫）が結成されたことに起因します。ただし、1954年（昭和29年）8月まではレイティングは行われていませんでした。また、東横映画を配給するために東京映画配給（現在の東映）が設立されたのは同年10月1日であるため、本作の配給は大映が担当しました。

現存するフィルムについて

東京国立近代美術館フィルムセンターには、本作の不完全版（48分）の上映用プリントが所蔵されています。しかし、このバージョンは美空ひばりの登場シーンが欠落しているため、完全な形で鑑賞することは難しい状況です。

作品データ

製作: 東横映画
上映時間: 80分
フォーマット: 白黒映画、スタンダード・サイズ（1.37:1）、24fps、モノラル録音
映倫番号: A379（旧映倫）
公開日: 1949年3月28日（日本）
配給: 大映

スタッフ

製作: 牧野満男
企画: 吉田信
監督: 斎藤寅次郎
原作: サトウハチロー
脚本: 八住利雄
撮影: 友成達雄
音楽: 山田榮一

主要キャスト

並木路子
渡辺篤
清川虹子
杉狂児
千早隆子
灰田勝彦
美空ひばり
和田肇
ミス・ワカナ

関連情報

東横映画: 本作を製作した映画会社
NHKのど自慢: 本作の題材となったラジオ番組

『のど自慢狂時代』は、戦後の日本を代表するコメディ映画であり、美空ひばりのデビュー作としても映画史にその名を刻んでいます。不完全版しか現存しないのが惜しまれますが、当時の人々の娯楽への欲求と、それを満たそうとした映画人たちの情熱を感じることができる貴重な作品です。

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