はだかの太陽

アイザック・アシモフ『はだかの太陽』

『はだかの太陽』は、アイザック・アシモフが1957年に発表したSF推理小説であり、『鋼鉄都市』の続編にあたります。本作は、高度にロボット化された社会を舞台に、殺人事件の謎を解き明かすSFミステリーの傑作として知られています。

あらすじ

物語は、ニューヨーク市警の刑事イライジャ・ベイリが、スペーサーワールドの一つであるソラリアで発生した科学者殺人事件の捜査を命じられるところから始まります。ベイリは、ロボットR・ダニール・オリヴォーと共にソラリアへ向かいます。

ソラリアは、人間一人当たり1万台ものロボットが存在する超ロボット依存社会です。ソラリアの人々は、ロボットに奉仕され、不自由なく暮らしています。彼らは領地からほとんど出ず、立体映像によるコミュニケーションを好みます。肉体的な接触はタブーとされ、人工生殖とロボットによる育児が一般的です。

ベイリは、被害者の妻グレディアが第一容疑者として浮上していることを知ります。しかし、ソラリアの社会では、直接的な暴力や他人の領地への侵入は考えにくいことです。国家安全保障責任者のグルアーは、事件の背後に銀河全体を揺るがす陰謀があると示唆しますが、何者かに毒殺されてしまいます。

ベイリは、アトルビッシュの捜査中止命令を無視し、ソラリアの慣習に反して直接対面による捜査を進めます。そして、事件の真相と、ソラリア社会が抱える問題にたどり着きます。ソラリアの人々は、ロボットに依存するあまり、人間として最も大切なものを失ってしまったのです。

ベイリの脳裏には、ソラリアの象徴である「はだかの太陽」が映し出されます。

本作の魅力

斬新な設定: 人間とロボットの関係、高度に発達した社会における人間の疎外、そしてタブーに満ちた社会構造など、現代社会にも通じるテーマが描かれています。
巧妙なミステリー: ロボット工学三原則を逆手に取った殺人トリックは、読者を驚かせます。閉鎖された社会における犯人探しは、推理小説としての面白さを引き立てます。
魅力的なキャラクター: ベイリは、異質な社会に戸惑いながらも、事件の真相を追求する強い意志を持った人物です。ロボットのダニールとのコンビも魅力的です。

書誌情報

『裸の太陽』（伊藤照夫（都筑道夫）訳、講談社サイエンス・フィクション・シリーズ） 1958年11月
『裸の太陽』（常盤新平訳、ハヤカワ・SF・シリーズ3090） 1965年7月
『ロボット国ソラリア』（内田庶訳、講談社世界の科学名作7） 1965年
『はだかの太陽』（冬川亘訳、ハヤカワ文庫SF） 1984年
『はだかの太陽 新訳版』（小尾芙佐訳、ハヤカワ文庫SF） 2015年

関連作品

ファウンデーションシリーズ
ロボット工学三原則
夜明けのロボット
ミラー・イメージ

『はだかの太陽』は、SFとミステリーの要素が融合した、アシモフの代表作の一つです。ぜひ、この機会にお読みください。

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