ひばり捕物帖 かんざし小判

『ひばり捕物帖 かんざし小判』作品解説

1958年に公開された『ひばり捕物帖 かんざし小判』は、沢島忠監督と美空ひばりの初タッグ作品であり、「ひばり捕物帖」シリーズの幕開けを飾る作品です。美空ひばりが歌い、踊り、縦横無尽に動き回る姿は、彼女の魅力を最大限に引き出し、多くの評論家がベストワンに挙げるほど高く評価されています。本作は、「ミュージカル喜劇調のチャンバラ」という、当時としては斬新なスタイルで観客を魅了しました。しかしその一方で、物語の内容自体は斬新さに欠けるという批評も存在します。

あらすじ

舞台は江戸。評判の美人で腕も立つ女岡っ引であるお七は、実は老中・阿部伊予守の妹、妙姫でした。お姫様暮らしが窮屈で、町民として暮らしていたお七は、江戸の神社で行われた「奉納美人番付」で横綱に選ばれ、賞品として純金の簪を授与されます。

しかし、美人番付で選ばれた女性たちが次々と簪で殺害される事件が発生。お七は、最初の犠牲者となったお小夜の簪が桜模様であることに気付き、簪の行方を追います。お七は、子分の早耳の五郎八と共に調査を進めるうち、古物商がその簪を買い取ったこと、そして、その簪を売ったお菊という娘が行方不明であることを突き止めます。さらに調査を進めるお七は、謎の侍たちに襲撃されますが、浪人・佐々木兵馬に助けられます。

その後、梅模様の簪を持つ絹屋の清葉も殺害されます。お七はお菊の兄、伊賀の源次が、大泥棒「稲葉小僧」一味であることを知り、島送りになっていた源次が御赦免で江戸に帰ってくると聞いたお七と五郎八は港に向かいますが、目の前で源次が謎の侍たちに連れ去られてしまいます。侍たちは、源次を那須刑部の剣術道場に運び込みます。実は、松永藩には財宝の在り処を示す3本の簪がありましたが、4年前に稲葉小僧一味に盗まれていました。道場には松永藩の家老・志垣主水正や、お七を襲撃した侍たちが集結。志垣は、私腹を肥やすために財宝を手に入れようと企んでいました。

お七は、兄の手助けを受け、将軍家御内室の使いとして捕らえられていたお菊を助け出し、最後の簪を持っているのが女歌舞伎の小春太夫であることを知ります。志垣一味は、最後の簪を奪おうと小春太夫に襲い掛かりますが、そこで舞っていたのはお七でした。乱闘が繰り広げられる中、兵馬が駆けつけ、捕手も到着し、お七の兄である伊予守も登場。志垣一味は捕らえられ、松永家の財宝は貧民に分け与えられることになります。実は兵馬は公儀隠密であり、事件を解決に導いたのでした。

事件解決後、町娘姿に戻ったお七と兵馬は、初めて出会った土手を寄り添いながら歩き、物語は幕を閉じます。

スタッフ

監督: 沢島忠
脚色: 中田竜雄、瀬戸口寅雄
原作: 瀬戸口寅雄
企画: 児玉浩嗣、神戸由美
撮影: 松井鴻
美術: 吉村晟
音楽: 高橋半
主題歌:「かんざし小判」「初恋柳」
録音: 中山茂二
照明: 田辺憲一
編集: 宮本信太郎

キャスト

美空ひばり - 阿部川町のお七/妙姫
堺駿二 - 早耳の五郎八
松風利栄子 - 喜代文
星十郎 - 宅悦
尾上鯉之助 - 阿部伊予守
杉狂児 - 寺尾十内
山口勇 - 猫目の権八
富久井一朗 - 虎
熊谷武 - 筑紫屋伝兵衛
岡島艶子 - お民
中島栄子 - お小夜
中村時之介 - 青山与平次
薄田研二 - 志垣主水正
円山栄子 - 澄江
里見浩太朗 - 田宮大介
阿部九洲男 - 那須刑部
遠山恭二 - 大木孫四郎
中野文男 - 竹内一角
東日出男 - 瓦版売り
伊東亮英 - 大島屋主人
竹原秀子 - お駒
北村曙美 - 清葉
沢村宗之助 - 伊賀の源次
花沢浩美 - お菊
藤木錦之助 - 松永家家臣
石井麗子 - 義経
吉本清子 - 富樫
月山路子 - 美人番附の娘達
西辻利々子 - 美人番附の娘達
海野治子 - 美人番附の娘達
加藤れい子 - 美人番附の娘達
七条友里子 - 美人番附の娘達
野崎邦江 - 美人番附の娘達
若水美子 - 小春太夫
東千代之介 - 佐々木兵馬

エピソード

佐々木兵馬を演じた東千代之介は、沢島忠監督の指示で実際に酒を飲んで酔った状態で撮影に臨んだとされています。東自身は、佐々木兵馬を「地でやれた」と語っています。

その他

同時上映:『旅笠道中』
ネット配信: 東映時代劇YouTubeにて期間限定配信

参考文献

KINENOTE
国立映画アーカイブ

外部リンク

allcinema
日本映画データベース
KINENOTE
IMDb
文化庁日本映画情報システム
東映ビデオ

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